卵で産む

4/12
前へ
/12ページ
次へ
 弘人とわたしが結婚して三年。  三年前まで弘人は連載漫画家だった。作品は一度アニメ化されたこともあるけど、弘人と話すまではわたしは知らない作品だった。  長期連載をしていた漫画が打ち切りとなり、次の漫画の連載が決まらず焦っていた当時の弘人をよく出版社へ足を運ばせていたので顔は知っていた。  とある日、わたしが仕事で遅くなり、ビールを飲みたかったので出版社の側の居酒屋へ行き、一人でビールとお通しで下向きにいた弘人とばったり出会い、わたしから声を掛けたのが話すきっかけになった。同じ歳なのもあり意気投合し、わたしはビールを片手にけらけら笑いながら一緒に焼き鳥を食べた。同じ歳なのに、生き方が違う。違う言語の人と話している感覚ではあったが、一緒にいて楽しかった。その夜はお互いビール三杯までにしてそれぞれの帰路に向かった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加