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弘人はそう言うとまた一口カレーを口にした。こうして席に座って、温かいものを食べれる心地よさというのは年を増すごとに薄れていく。大人になると、生きていくのがやっとで住む場所を守るために節約として食費を減らすことを優先するこの世の中。弘人も連載が取れなかった時に痛感したのだろう。今、こうしていられるのはわたしが働いているのもあるが、弘人の料理があってのわたし達の家庭の幸せだとわたしは思っている。
「……そうだよね、わたしも仕事ばっかりでごめんね」
「そうだよ、由貴がいつも帰りが遅いからなかなか作れないしさ」
弘人は食べ終えたお皿にスプーンを置き、わたしを見た。
「次の日のカレーがおいしいとか誰かが言うけどさ、おれはその日のカレーが好きだし、作ったらその日のうちに、食べてもらいたい。一緒にね」
「弘人……」
思ったことを言っているだけに見えるが、わたしは弘人のこういう子どもっぽいところが好きだった。
「弘人、今日。一緒にお風呂に入ろうよ」
わたしの一言に弘人は目を輝かせた。
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