卵で産む

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 子どもより仕事がしたい。  学生時代の友達の結婚後に、子どもができたと聞いてうれしくなったが、久しぶりに会った時に子どもに振り回されている姿を見ると、わたしはまだいらないなって率直に思ったことがこの思いを強くした。結婚後は、漠然と産むことが怖い。不幸な子どもになってしまったどうしよう。わたしが仕事ばかりしていると会社で嫌な目で見られるだろう。学校に上がってから、ママ友と上手く付き合えなかったどうしよう。――あんたが仕事ばかりだから子どもがまともに育たなかったのよ――あらゆる子どもの不幸がわたしのせいになると想像しただけで怖い。もっと言うと流産や死産を経験したくない。と真っ先に頭の思考が働く。 そう思ってから――無理に妊娠はしたくない、考えない、今が幸せなんだ。弘人とお互いに白髪頭になって、顔の皺が増えて、背中が曲がって、どっちかが死んでもお墓で待ってくれると持っている今が、大切だった。  わたしは本を産んでいる。そうとも思ていた。作家さんの作品をこの世に贈るまでの段取りを行って、世間の人へその本の良さを伝える。これがわたしの社会的役割で、人のためになっている。  弘人も漫画を産んでいる。誰かの気持ちを楽しくさせている。わたしと弘人はお互い作品を産み、そのことにしあわせを感じている。  弘人も同じ気持ちだと思っていた。
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