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堕落
「……あの、藤川さん。お疲れのところ申し訳ありませんが……少々お伺いしても宜しいでしょうか?」
「……はい。どうしましたか夜野さん」
それから、およそ二週間経て。
たった今帰宅した私に、どこか心配そうな表情で話し掛ける夜野さん。どうしましたか、なんて尋ね返してみたけど……まあ、用件は大方分かっている。
「……藤川さんは既に立派な大人だと以前お母様に申し上げた手前、このようなことをお伝えするのは矛盾があるかと思うのですが……ここ最近、貴女のお帰りが以前に比べずっと遅くなることが多いようなので、些か心配なものでして……」
「……はい」
……うん、やっぱりそれだよね。そっとポケットからスマホを取り出し画面を確認する。時刻は22時17分――当然ながら、とうに夜の帳が降りている。
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