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「……えっと、その……友達と遊んでたら、いつの間にかこんな時間になってしまって……」
「……そう、ですか」
少し目を逸らし、たどたどしく応える私。……うん、嘘はついてない……よね? 友達とは言い難い――というか、言えないけど……まあ、そこに関してはさほど正確に伝える必要もないだろうし。
「……藤川さん。もちろん、ご友人との時間を大切にすることは素晴らしいことだと思います。……ですが、このような時間までお帰りにならないというのは……まだたった数ヶ月ではありますが、私の見てきた貴女の印象とはおよそ一致しないものです。本当は、貴女自身のご意思に反しているのではないでしょうか? もしもそうでしたら、一刻も早く――」
「…………うるさい」
「…………え?」
不意に零した私の呟きに、些か驚いた様子を浮かべる夜野さん。だけど、驚いたのは私も同じ――いや、きっと私の方が驚いているくらいだ。……なんで私、こんなこと……だけど――
「――うるさいって言ってんのよ! 私がいつどこで何をしてようと、貴方に関係ないでしょ! もう放っといてよ!」
慎ましさの欠片もない荒々しい口調で言い放ち、扉をピシャリと閉め自室へと入っていく私。一瞬振り返った際目に入った、ひどく心配そうな彼の表情にズキリと胸が痛んだけど……どうしてか、謝罪の一言すら口にできなくて。
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