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「――そういうわけで、そのお客様の申請手続きにすごく手間取ってしまって。その間にも、窓口には長蛇の列をなしていますし。今日はなんだか一段と疲労間が覚えましたね……まあ、私が未熟なのが原因なのですが」
「……そうでしたか。それは大変でしたね。本日もお疲れ様です、百桃さん」
円卓で食事を楽しみながら今日の出来事を話すと、優しい微笑みを浮かべ労ってくれる紗雪さん。……まあ、分かってて甘えてるんだけどね。
ちなみに、時間が時間なだけに訪れるのはほとんど休日の前日である。区役所は土日祝が休日だから、基本的には金曜日や土曜日ということになる。今日は数少ない祝日前日だけど。
そして、来た時はいつも紗雪さんが晩御飯を作ってくれている。今日のメインはヤンニョムチキン……うん、今日も最高に美味しいっ。
その後も閑談を交わしつつ食事を終え、二人で食器を洗った後、再びゆったりとした時間を過ごす私達。すると、徐に立ち上がりキッチンへ向かっていく紗雪さん。きっと、飲み物を用意してくれるのだろう。そんな彼の背中に、ほとんど呟くようにポツリと話しかける。
「……ねえ、紗雪さん。私達、少しは強くなれたかな?」
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