少しずつ、一歩ずつでも――

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 ――時は、三年前に遡り。 『……それから、もう一つ留めて頂きたいことがあります。もしも――もしも本当に、そのお身体に新たな命を宿していたとしても……そして、その際に貴女がどのような決断をなさろうとも――私はその決断を尊重し、力の限り貴女をお支えする所存であると、今ここに申し上げます』  妊娠(れい)の件について夜野(やの)さんに相談したあの日、真っ直ぐに私を見つめ彼が伝えてくれた言葉。……どうして、そこまでしてくれるのか――そんな旨を尋ねると、彼は少し顔を俯かせて口を開き言葉を紡いだ。 『……そうですね、11年前のことになります――私は、当時交際していた女性に望まぬ妊娠をさせてしまいました』 『…………え?』
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