9人が本棚に入れています
本棚に追加
僕にはやりたいこともなく、そもそも何がしたいのかもわからない。
ただ毎日を生きるだけ。
そんな日常がずっと続くと本当に思っていた。
君が現れるまでは。
君ははじめの頃から規格外だった。僕の前に突如として姿を現し、
僕に近寄って寄り添って、時には怒って。
誰も僕に近づこうとしない中、君だけが僕に
”友達になりたい。”
”君とともに人生を歩みたい。”
”僕は君、君は僕のように心を通じ合いたい。”って
ありったけの気持ちを込めて言ってくれた。
そして、君は本当に僕を助けて暗闇から輝かしい君のいるところまで手をひっぱってくれた。周りと壁を作って人生を周りに操作され決められた道にずっと進んでいた僕を変えてくれた。
そして、いつのまにか・・
いや、きっと最初から僕は君に恋をしていた。
君が僕の目の前に現れた時に。
けど、この恋は報われない。
だって君には好きな人が存在するから。
君はその子にだけ僕の知らない笑顔、言葉、仕草をみせる。
その度に僕は腹立たしく、憎くて顔を歪めて涙を堪えていた。
そして、君はそれを知らない。
そんな僕はある時、君のためだけに用意した水平線そして沈みゆく太陽と荒々しい奇岩と静かに揺れる波を照らす夕日の前で最後の思い出を作ろうとしていた。そう、僕は明日、アメリカのエリート学校に行くことになったのだ。
だから僕は君にさよならの挨拶をするためにここに連れてきた。
そして今日の終わりには君への思いにけじめをつけて告らずに楽しく終えようと。
それなのに僕は君が発した
”あなたなんかいなければよかったのに。
そしたら世界で一番大切な彼を君に奪われずに済んだのに・・”
という言葉で悲しみ、絶望し、そして僕を救ったのに僕を捨てようとしている君への怒りがこみ上げてきて言ってしまった。
”悪かったなぁ。僕が生きていて。けど、僕は君の大切な人なんかどうでもいい。君がいれば・・。
だって僕は君のことが好きだから。
それじゃあ。さようなら”
きっとその時の僕は今にも泣き出しそうな顔でそして今までで一番人間らしい顔だっただろう。
その次の翌朝、僕はアメリカへと旅立った。
アメリカでの生活は思ったよりもスムーズに進んだ。
僕はそこでは、新たな友達、希望、未来が見えてくると思ってきた。
なにより君とこれ以上一緒にいるのが辛くてきっと忘れられると思っていたのに。
僕は授業を受けるときも、友達と話すときも、どんなときだって君との幸せな生活があたまをよぎった。辛いことだってあったのによみがえるのは君との幸せな思い出、君の眩しく美しい笑顔ばかり。
忘れたくて全世界国民が絶景だと認める景色を見に行った。でも、君よりも美しいとは思わない。
もう僕は君に支配されていて、もう離れても遅かったのだと嫌でも気づいてしまう。
それと同時に僕はもう一度君に告白をして振られない限り先へと進めないことも分かってしまった。
だからこそ、僕はもう一度君のいる世界へと旅立った。
空港についたら君を探しに思いっきり駆け走った。
そして君はいた。僕が告白したあの場所に。
”ようやく君に会えた”
君を見た瞬間、自分の待ち望んでいた場所についたという高揚感、そして今後僕が君にすることに対しての不安が一気に押し寄せてきた。
でも、僕はもうあのときのように自暴自棄にはならない。
君が僕にしてくれたように僕も君に愛を込めて伝える。
”君が僕に手を差し伸べてくれたときからずっと君のことが好きでした。
僕は今までやりたいことも好きなこともなくただ淡々と生きているだけだった。でも、僕は君のおかげでやりたいことがみつかった。
それは君の側にいること。
僕はこの世界の誰よりも君のことを愛しています。
僕をこれからも君の側にいさせてください。”
僕は身を震わせながらすすり泣くように笑った。
The end
最初のコメントを投稿しよう!