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――――
「ねえ、”今際の再開”って知ってる」
「知らないよ」
「え~!知らないの!
私たちが小学生だったころに流行った都市伝説だよ。
文字通り、死に際になった時に会いたいと願った人に1度だけ会えるの。
だけど・・・」
「あーそんなのあったな。で、だけどー?」
「だけど・・・会いたかった人に再開したら、
その人と過ごした記憶をすべて失ってしまうの。」
「ふーん」
「なによ、その興味なさそうな感じ!」
「まあ、僕は死ぬ予定ないし」
「あー、そうですか。
また屁理屈みたいなこと言って、あんたが死んでも会いに行ってやらないんだからね!」
「あー結構結構、忘れてもらう方が困るからな!」
――――
そんなバカげた話をしながら歩いた下校道が懐かしいとふと思い出した。
今、僕は1人でこの思い出の道を歩いている。
人生で一番長い時間を彼女と過ごした道。
付き合う前の9年間、付き合ってからの3年間。
毎日、学校へ通うために向かった無人駅への道。
たくさんの愛しい思い出が詰まった道。
けれど、もう彼女と歩くことはできない。
そんな喪失感があんな都市伝説を思い出させたのだろうか。
あの時は馬鹿げた話と鼻で笑っていた。
でも、今は・・・もう一度あなたに会いたい。
夜の暗闇にオレンジの空が侵食されていくのを見上げながら、
僕は人ひとりいない田んぼ道を孤独な歩幅で歩いた。
人混みに押しつぶれれるほど賑やかで、
僕の存在なんてちっぽけなものだと知らしめるような都会へ帰るため。
無人の駅へ足を進めた。
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