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三、鳳凰のこたえ
鳳凰を見つけた、たまご探索隊の一行。
巣の近くでしばらく動向を見守っておりましたが、待てど暮らせど、かの鳥がたまごを産む気配がありません。
探索隊の者たちは、鳳凰がたまごを産み落としたならば、隙をねらってすぐにでも持ち去るつもりでおりました。ですから、息を潜めて待つしかない日々は、さぞ、苦しかったことでしょう。
そうやって一行の苛立ちが募っていく中、時藤さまはひとり、ある提案をいたしました。
『たまごを頂戴するならば、まず鳳凰に敬意を払うのが先だよ。わたしたちは影でコソコソと様子をうかがっているけれど、相手はなんといっても霊鳥。神のように気高い存在だ。まずわたしが、かの鳥に頭を下げてこよう』
この言い分に、他の者は眉をつり上げました。
『とんでもない。そんなことをしたら、鳳凰に逃げられてしまうじゃないか』
確かに人が姿を現せば、肝心の鳳凰は行方をくらましてしまうかもしれません。その心配は、時藤さまも理解できました。
しかし、自分よりはるかに高貴な存在である鳳凰に対し、なんの断りもなくたまご持ち去るのは、あまりにも無遠慮に思われたのです。
仲間たちとの意見の食い違いに、時藤さまは幾日も頭を悩ませて過ごしました。
そんなある日ーー。
鳳凰が、明らかにこちらの気配を感じとり、警戒している様子がうかがわれたのです。
時藤さまは、決心なさいました。
仲間が止めるのも振り切って、鳳凰の前に進み出て、地に額をついて希いました。
『おそれながら、わたしは今上帝の使いで参った者。我らの主が、貴方さまのたまごを所望しておられます。無礼を承知で、どうかひとつ、たまごを持ち帰らせていただけないでしょうか』
長いこと、頭を下げておりました。
その間、鳳凰はじっと時藤さまを見つめていたといいます。
ややあって、ひと声。
鳳凰は天へ向かって、甲高く鳴きました。
そしてそのまま、七色のつばさをはためかせ、飛び去ってしまったのだそうです。
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