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引き込まれるような瞳に、
私はようやく収穫を得たような気持ちになった。
正直にいえば、結構タイプだった。
私は画面の上部に戻ると、名前を確認する。
"すい"
なかなかいい響きではあるその名前は、
なんとなく彼の雰囲気に合っている気がした。
私はすぐにその人にチャットを送る。
せっかく見つけたイケメンを逃す手はない。
ピコンっとなる通知音に、
これほど胸が躍ったのは久々だった。
彼の返信はプロフィールの文と同じく、
簡素で素っ気ないものだった。
こんばんは、から始まった会話。
そしてすぐに、通話の誘いが彼の方から来た。
10分おきぐらいに返ってくる彼の返信はわざとなのか、
いい具合に私を緊張させた。
"かけるねーー"
その言葉に心臓が大きく揺れるような感覚を覚える。
冷静になろうと目を閉じて深呼吸をする。
程なくしてかかってきた通話に出ると、
素っ気ない返事からは想像もできないほど
小さく穏やかな声が聞こえてくる。
拍子抜けした私は、思わず黙り込んでしまった。
「ん?あの…」
電話の向こう側から不安そうな声が聞こえてくる。
私はその消え入りそうな声に我にかえると、
彼と同じように小さく挨拶をした。
なかなか喋り出さない電話の向こうの彼に、
私はありきたりな質問を思いつく限りしていく。
そうやって言葉を交わしていくうちに
彼の声も私の声も大きくなり、
次第に緊張の色もなくなっていった。
水稀。
それが彼の本当の名前だった。
"すい"というのは、水という漢字から取ったのだろう。
水稀は私と同い年の高校2年生で、私の住むところからずっと遠くの場所に住んでいる人だった。
送ってもらった写真を見る限り、
顔はかなり整っている方だと思う。
マッシュの黒髪から覗く二重の目は綺麗な形をしていて、小さな顔に収まったパーツがどれも良いバランスをとっている。
男特有のそのカッコ良さと、
その中に僅かに感じられる可愛さの両方を合わせ持つ、
まさに完璧なイケメンだった。
それは、私が出会った中で1番のイケメンと言っても過言ではないほどに。
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