Part.3

5/6
前へ
/17ページ
次へ
ガチャーー 玄関を開けると、 今日もまた調子のいい妹の声が聞こえた。 その明るい声がまた、私をさらに暗くする。 私は妹に話しかけられないうちに自分の部屋に入ると、 重たいリュックを床に放り投げた。 「はぁ…」 ゴロンと布団に横になると、 途端に1日の疲れが襲ってきた。 YouTubeでも見て時間を潰そう。 少しでも、嫌なことから目を背けるために。 そんな風にダラダラと過ごして、 気付けばかなりの時間が経っていた。 私は、お風呂とご飯を済ませようと立ち上がる。 私の夕飯はいつも、1人きりだ。 家族はリビングで食べているが、 私はわざとその中には入らず自分の部屋に篭る。 1人でいる方が気が楽というのが本心だけど 家族と話すのが憂鬱なのも事実だった。 楽しそうな笑い声が聞こえてくる。 その笑い声が、 私の存在を否定しているように聞こえる。 YouTubeの音量を上げて、私はさっさと夕食を済ませ、 その流れで家族と顔を合わすことなくお風呂に駆け込んだ。 「ふぅ……」 お風呂から出た私は今、 チャットアプリを前に深呼吸をしていた。 また、見たくないものが増えている気がした。 でも見なければ、私は明日に進めないだろうから。 私は早まる鼓動をなんとか抑え、 そっとアプリを開いた。 「はは……」 新しく更新された水稀の投稿に乾いた笑いがこぼれる。 "まじで脈なしすぎる" その文字から、 なぜだか悲痛な感情が鮮明に伝わってくる。 同じ気持ちを、私も今抱いているから。 さらに追い打ちをかけるように、女の子の投稿写真に残る水稀のコメントを見つけてしまう。 "顔面強すぎ" "かわいい" ある女の子の投稿写真にだけ 分かりやすく残る水稀の跡。 望んでも、私の投稿には何も反応がないのに。 私の中で信じたくなかった推測が、 これで確実なものになった。 水稀の好きな人、この子なんだ。 清楚で色白で、いかにもモテそうな子。 私じゃ足元にも及ばないぐらい可愛い。 スマホを持つ手が震える。 確信に変わった疑惑が、私を追い詰める。 そうやって気付けば、 私は水稀にチャットを送っていた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加