Part.3

6/6
前へ
/17ページ
次へ
"今日話せる?" 私から絞り出してでてきた言葉は、それだけだった。 もっと聞きたいことはたくさんあるのに。 いざ水稀に聞こうとすれば、 送れる言葉はたったこれだけしかなかった。 私は水稀にチャットを送ると、すぐにスマホを閉じる。 返信は来て欲しいのに、見るのが怖い。 返ってくる言葉が分かりきっているから尚更。 私はグッと堪えていた涙を流さないように手を握りしめる。 爪が皮膚に刺さって、鈍い痛みを感じる。 でもその何倍も胸が痛かった。 何度も深呼吸を繰り返し、 スマホを持っては置いて、 それでも時間の流れは恨みたくなるほど遅い。 それから何分たったか。 不安な気持ちより、 水稀の返信が気になる気持ちが勝ち始めた頃。 私はスマホを両手で握りしめるように持つと、 静かにチャットアプリを開いた。 返信は、きている。 途端にドクドクと音を立てる心臓が、 さらに私の不安を掻き立てる。 大丈夫、大丈夫と、そう自分に言い聞かせながら 私は水稀とのチャットルームを開いた。 「えーー」 水稀からの返信は、 私が想像していたものとは違った。 これならいっそ、想像通りの返事のがよかった。 画面に写るその言葉の意味を理解したくない。 理解したくないのに、すぐに理解できてしまう。 水稀の言葉の意味を悟ったその瞬間、 スマホの画面が滲んで見えた。 そして頬をつたって落ちる雫が画面を濡らす。 我慢していたものが溢れ出るように、 自然と涙が止まらなくなる。 終わってしまう。 その事実が私をどうしようもなく絶望させた。 "ごめん、俺このアプリやめようと思ってるから"
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加