Part.4

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送ってしまってから私は急に冷静さを取り戻す。 改めて自分の送った文を眺めていると、 恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだった。 こんなにあっさり伝えてしまった。 私が誰かに気持ちを伝えることなんて、 一生ないと思っていたのに。 前に進むことすら満足にできない臆病者の私が、 絶対に砕けない岩に突進していくなんて。 怖いほど水稀に突き動かされている自分が、 まるで私じゃないみたいな感覚になる。 "嬉しいよ、そんな風に思ってくれて" どんな冷たい言葉をかけられるかヒヤヒヤしていた私は、水稀の返信に固まってしまう。 面倒くさがられると思っていた。 いや、本心は面倒くさいと思ってるのかもしれないけど。 "少しだけ考えてみるね" 素っ気ない水稀が送ったとは思えない、 僅かに優しさを感じる文面。 こんなことで期待してはいけない。 そう思うのに、期待は抑えられないほど膨らんでいく。 私の言葉でも、水稀の決断を揺がせられるんだと。 あの子の気持ちにも、運良くヒビが入るかもしれない。 なんて、そんな思い込みさえしてしまう。 "ありがとう" その言葉に私は精一杯の願いと期待を込める。 この思いが届いてほしい。 どうかあの子のことなんて忘れて、 いや、いっそもう嫌いになってしまって。 今の私には、こうやって祈ることしかできない。 水稀を信じて待つことしかできないのが、 もどかしくて仕方ない。 私は、そっとチャットアプリを閉じる。 今日は、誰かと電話する気にはとてもなれなかった。 「はぁ……」 安心したからか、それともあまりに不安すぎるからか、 ため息と一緒にどっと押し寄せてくる疲れ。 今日はもう、このまま寝よう。 明日になったら、 きっと何かが変わってしまうけど。 目を覚ましたら、 また知りたくないことを知ってしまうけど。 それでも、 眠っている間は水稀のことを考えなくて済むから。 水稀がもしーーなんて、 余計なことに悩まなくてもいいから。 だから、今は……。 私は静かに瞼を閉じた。
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