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この2人の共通点は間違いなくあの女の子。
水稀の話したいことは、きっとあの子のこと。
あの女の子と"たくくん"の間になにかが起きて、
水稀はそれを知ってリプライをしたんだ。
あの子のために。
あの子のために、わさわざ。
考えれば考えるほど涙が溢れそうになる。
そんなに、あの子のことが好き?
脈がないと知っていても、
あの子のために何かしようとするの?
なんで、水稀の価値すら分からないあの子なんかが。
水稀より"たくくん"を選ぶ、
あんな子のどこがいいの。
醜く歪んだ感情の矛先が、可愛いあの子にむく。
憎たらしい、勝てないと分かっているから余計に。
溢れ出る思いと一緒に流れる涙が、
握りしめた手の上に落ちる。
生暖かいそれすら恨みたくなる。
ブー。
その時、通知を知らせるバイブが鳴った。
スマホに目を向けると、
水稀からの返信が表示されている。
ほんとに、タイミングが悪い。
返信の内容も、なんとなく分かってしまう。
私は答え合わせでもするような感覚で、
水稀とのチャットルームを開いた。
"ごめん、やっぱりやめることにした"
ほらね、やっぱり。
あの3人の間で何があったのか、
詳しいことなんて知りたくない。
どうせ私には、知る権利すらないのだから。
"そっか、それなら仕方ないね"
こんな言葉で片付けられるわけないのに、こんな短い一言で片付けなきゃいけない。
「はは…」
乾いた笑いが静かな部屋に響く。
惨めな自分に対して込み上げる怒りのようなものが、
私の首をきつく絞める。
私が勝手に水稀を好きになって、勝手に自滅しただけ。
そんな哀れな自分が情けなくなる。
ピコン。
聞こえてきた通知の音。
キッと睨むようにスマホの画面に目を向けた私から、
さっきまでの憤りがスッと消えていく。
"でもインスタとかなら交換できるよ"
水稀の思わぬ提案に、私は唖然としてしまう。
状況を整理してその言葉の意味を理解すると、
ほんの少し心が軽くなる。
もちろん、断る選択肢なんて私にはなかった。
水稀から差し伸べられた手を振り払う術なんて、
私が知るはずない。
水稀と関係が続けられるなら何でもいい。
私は新しい繋がりを求めて、
水稀とインスタを交換した。
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