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Part.2
まただ。
私の期待を裏切るように、
アプリで声をかけた人もかけてくれた人もみんな、
ろくな奴じゃなかった。
あの日から3日。
チャットで話したり、通話をしたり。
色んなことを試みたものの、
私の求めているような人は見つからなかった。
きっと顔がいい人を求めすぎているのが悪いんだ。
顔が良ければ性格に難あり。
この言葉の意味を、
私はこのアプリを通して痛いほど実感した。
イケメンは顔が可愛い子しか相手にしない。
流行りにのった雰囲気がいい奴も、
会って行為をすることにしか興味がない。
そんなのばかり。
私に話しかけてくる人の大半は、
俗にいう陰キャと呼ばれる部類の人たち。
話も続かないし、アタックがあまりに必死すぎて、
嫌気がさしてしまう。
「 まぁ、そんな上手くはいかないよね。」
そう呟き、嘲笑うように
数々のチャットの履歴を見つめる。
やっぱりこんなことやめようか…。
私には、好きじゃなくとも立派な彼氏がいるわけだし。
そう思いはするも、一度期待してしまった今じゃ
諦めることはそう簡単じゃない。
いくらこの3日で落胆の気持ちが大きくなったとはいえ、可能性がある限り期待がゼロになることはきっとない。
それに裏切ってしまった事実はもう覆らない。
私はその夜、半端作業のように
通話を誘う内容の投稿をする。
期待は、あまりしていない。
反応をくれる人の中で、
少しでもマシな人がいれば当たりぐらいの気持ち。
私は、反応をくれた人のプロフィールを
一人一人覗いていく。
この人は好みじゃない。
この人は年上すぎ。
この人は隠す気もない変態だし。
みんなそうやってどこかしら欠点があって、
それが致命傷になる。
私はそんな光景に段々と苛立ちを覚え、
動かす指の動きも早くなっていく。
そして期待もせず最後の人のプロフィールを開く。
"ともだちほしい"とだけ書かれた簡素なプロフィール藍。
アイコンは自撮りでも風景でもなく、
ジブリの古風なイラストだった。
ゆっくりと画面を下にスクロールすると、
一枚の写真が視界に入る。
そこには顔の半分だけをうつし、流行りの黒マスクをつけたいかにもモテそうな男がこちらを見ていた。
くっきり二重の丸い瞳には、
照明の加減からなのか光が入っていない。
しかしそれがまた、
謎の魅力を引き出している気もした。
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