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Part.3
朝、窓の外を見れば綺麗な快晴が広がっていた。
まるで今の私の心を映し出したかのようなその綺麗な青空に、心が躍るような気持ちになる。
ふと私は思い出したようにスマホを手に取る。
水稀との通話は私の起きる少し前に切れていた。
その事実に少しだけ胸の痛みを感じたものの、
通話の履歴を見ると
そんな痛みはすぐに期待に変わった。
今日も、水稀と通話できるかもしれない。
そしてそんな日を何十回と繰り返していけば、
水稀を手に入れられる日がくるかもしれない。
でも、
そんな日があってはならない。
そんな日がくる前に、
私にはやるべきことが残っているのだから。
「おはよ、優菜ーー」
その声の主に、私は息が止まりそうな感覚になる。
晴れた気分で登校してきた直後私を呼び止めたその声は、いつも以上に私を不快にする。
振り返った先でいつものように私に笑顔を向けるのは、
もちろん彼氏の優斗だった。
耳に残る水稀の声を上書きしていくように、
優斗が私に近づき話始める。
私の遅く小さな歩幅に合わせて、
ゆっくりと隣を歩きながら。
「今日は部活あるから、先帰ってていいよ」
ほんとは一緒に帰りたいけどね、
と少し残念そうにボソッと呟くのが聞こえる。
私は今、どんな顔で優斗に向き合えばいいのか。
どんな気持ちで隣を歩けばいいのか。
他の男と寝落ちしました、なんて言えるわけない。
それも故意に、なんて口が裂けても言えない。
私なんかと一緒にいることを望むような人に、
こんなに嬉しそうに私のことを話す人に、
そんな酷い仕打ちができてしまう自分に呆れる。
それでも、
俯いた私の頭には水稀のことが浮かんでいた。
学校の終わりのチャイムに緊張の糸が切れる。
優斗には気付かれない程度になるべく関わるのを避けようと必死だったせいか、どっと疲れが押し寄せてくる。
そのまま重たい身体を引きずるように家に帰ると、
私はベットに体を預けるようにして倒れた。
バカだ、最低だ、ほんとにどうしようもない。
優斗の顔を見たら、
自分を責める言葉が頭に浮かんだ。
弁解のしようがない。
そもそもこうなることを分かっててやったんだ。
気の迷いで済まされる話ではないことは分かってた。
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