2.失望

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----- それが俺の猫なのか。 「何で笑ってるんですか?」 「あ、すみません」 喋れる。 八野圭人の話を聞いている途中だった。 猫が人間になって、俺も猫になって、 また人間になって、 それから数日。 「とにかくこれは真剣な話です。 …俺、近重さんの家に行きました。 ご家族に許可をもらって。」 「近重さんの家族は、近重さんの消息を知ってるんですか?」 「いや、行方はわからないと言ってました。でも、死んでなんかいないと。 絶対に生きていると。 それで…」 「…何かわかりましたか?」 「実は、見てほしいものがあります」 八野圭人は、俺の家で、紙袋を取り出した。 小さな箱を机の上に置く。 茶の入ったグラスが少し揺れる。 「…それは?」 「これが原因だったんです」 「原因?」 八野は小さな箱を開いた。 「…指輪、ですか」 「ペアリングです。一つ、欠けています」 「本当ですね」 「これを見つけて、何となくですけど、ピンと来たんです。それで、指にはめて見ました」 「…それで?」 「実演します」 八野は二つ分空いた穴のうち、一つにハマっていた指輪を手に取る。 びっ、と静電気が走った。 「わっ」 指輪はぐわんぐわんと、一人でに、磁石に全方位から引っ張られているように、意志を持っているかのように動く。 キーン、と耳鳴りがして、部屋全体、そこら中の空気が震える。 俺は不快な音に顔を歪め、耳を塞いだ。 「何だこの音…!」 「これをっ…捕まえた!」 八野が、その不快な現象の中心であろう指輪を、力づくで指に嵌めた。 すると、指輪はスッと落ち着いた。 「……何ですか今の。あ、手品?」 八野は神妙な顔をした。 「これは、呪いですよ」 「…はぁ」 「近重さんの呪いです!! それか、その周りの、多分彼女か誰か… この指輪を近重さんと一緒につけるはずだった誰かの怨念が、 こうして現れてるんです!」 「そう…なんですかね?」 「そうとしか考えられないです。 そして、森山さんが猫になったことも、何か関係があるのかもしれないです」 「それで、どう関係が? 近重拓実と僕は、何の面識もありませんよ。 ましてや、彼に呪われる心当たりもないですし」 「本当に?」 一瞬で後悔した。 「ありませんよ。そもそも、俺たち一般人にとっては、あなた方は別世界の人なんですから」 「確かに、そうかもしれません…」 ごと、と、テーブルのグラスが動いた。 「わ、地震かな?」 八野が言う。 ごと、ごとごとごと… 地面が沸騰する水面に揺られるように、 小刻みに激しく揺れる。 ペンダントライトも、ぐらんぐらんと揺れている。 「震度…3ぐらいですかね」 八野がテーブルの淵を掴みながらテレビをつけるが、画面には速報も何も映らない。 「揺れが強くなってます!外に出ましょう」 「外の方が危ないかも…」 「歪んでドアが開かなくなります!」 八野はそう言って、俺の手をとって玄関へ走った。 つま先に靴を引っ掛け、扉を開けて、外へ飛び出した。 眩しい光で目が眩んだ。 「……収まりましたね」 八野は言い、俺の手を離した。 「そう、ですね」 「…ところで、ここは?」
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