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そんな時、俺に朗報が飛び込んできた。
「真山さん、用事って…」
「森山君、来週から現場行ってほしいんだけど、頼めそう?元の担当者が急病で、しばらく休むみたいなんだけど」
「撮影現場に俺が?行っていいんですか?」
「行ってほしいの!新しいドラマのコンテンツ担当として。わからないことは私が教えるから、どう?制作決定から注目されてる木10の」
「……ま…まじ…ですか……」
これは、どうしたものか…
「真山君、どうしたの…?ぜ、全然いいのよ断っても!そんなに思い詰めるほどのことじゃ…」
「そのドラマ、中島章太郎の新作ですよね!」
「あ、知ってたの?」
「はい!!もちろん!中島先生脚本のドラマは全部見てて、“スレイキング”が大ヒットするずっと前から応援してます!“未来予報士すぐる”が大好きで子供の頃から何度も見返して…」
…って、ここは会社だった。
目の前の先輩が目を点にしている。
「あ…すみません、つい興奮しちゃって」
「あー全然いいのいいの、森山君がそんなに元気に話すなんて、相当なファンなんだね〜!急にお願いしたのに喜んでくれて嬉しい。でも、くれぐれも現場では冷静にね」
俺、憧れの脚本家のドラマに関われるんだ…
こんな機会、絶対ないと思ってた。
「は、はい!もちろんです!!」
会社、辞めてなくてよかった…
テレビドラマに関われたらって一心でこの局に入れたのはいいけど、下っ端の事務ばかりだった。
毎日仕事がつまらないなんて思ってた。
でもそれがこんな仕事に繋がるなんて。
神様、俺にも運をくれてありがとう!!
「え?中島章太郎!?脚本家の?お前大ファンじゃなかった?CBCも捨てたもんじゃないな!」
こいつは菱沼、大学の友達だ。
ちょくちょく連絡を取っている。
俺にはこいつしか話す相手はいないが、それでも十分。
「そうなんだよ、ずっと雑用係だった俺がついに現場に行けるんだ。代打だけど…」
「珍しく仕事の話だと思ったら、そんなラッキーなことがあったんだな。いつも秘密って言って教えてくれないのに」
「公開前の情報は言わない決まりなんだよ。でも今回は言わずにはいられないだろ!?菱沼ぐらいには教えたって許されるよ」
「どうだかなあ〜」
「ふ、不安になること言うなよ…ってか、菱沼が口外しなきゃいいだけなんだから」
「わかってるよ、俺を誰だと思ってんだ」
「SNSに書くのも禁止だからな!」
「はいはいはいはい」
菱沼には怒った口調になったけど、俺の顔はニヤついていた。
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