虹のたまご

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   その頃にヒヨコが生まれなくて、本当に良かったと思う。願わなくても、叶ったから。  高校を卒業する前、僕が気になっていたクラスの女子から告白され、付き合うことになった。  同じ県内だけれど別々の大学に進学することが決まっていて、このまま卒業して離れてしまうのが嫌だと思ったらしい。  遅れて僕も、告白をした。 「実は僕も、好きだったんだ」 「じゃあ自分から言ってよー。私すっごくドキドキしたんだからね! 気持ちって、あっためてるだけじゃ伝わらないのよ」  笑う彼女の顔がまぶしい。僕は照れもあって、頭をかきながら小さくつぶやく。 「あっためるのがクセになってるのかも」  なんじゃそりゃ、と言って彼女は僕のおでこに軽くチョップしてきた。今度から何か隠しごとしてるようだったら、頭を割って中を見ちゃうからね、と言って笑われた。  その日僕は、家に帰るなり一目散に自分の部屋へと向かった。  ヒヨコのケースを開けると、たまごはちゃんと、たまごのままだった。僕の願いが彼女に無理やり告白させたのではないと分かって、ベッドの上で飛び跳ねた。  それからたまごに、彼女の素敵なところをたくさん話した。たまごも何だか喜んでいるように見えた。  
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