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孤児院では寝る前の身体を拭く時間になったようだ。 「あれ? エンくんはしないの? 男子は向こうの部屋だよ」 「僕は常に清潔ですから」 「でも」 「料理魔法で清潔なのです。僕は臭いますか?」 「あ、そういえば臭くないね。服もきれいだし」 「はい」 そういえば、孤児院には風呂が無いのだったな。普通の家にもだいたいは無いのだが。 サービスで造ってやるか。 「男風呂、女風呂で分けますね」 「え?」 「各、15人が入れる広さでいいですね」 「え?」 「どこにします?」 「何を?」 「お風呂場です」 「えっと……造ってくれるの?」 「はい」 「料理魔法で?」 「はい」 「それ、土魔法や建築魔法」 「料理魔法です」 「代金は?」 「サービスです」 「水や沸かす費用は?」 「僕の料理魔法で天然かけ流し温泉です」 「ありがとう! エンくん」 「いえ」 裏の空いているスペースに温泉の建物を造った。 「院長の許可は本当に不要なんですか?」 「うん。お金さえ使わなければ、人殺し以外は何をしても良いって方針の院長だから」 「なるほど」 「でも、小さな建物だね」 「え?」 「裏庭が狭いから仕方ないけど、あの建物だと数人しか入れないね」 「心配無用です」 「え?」 「中は空間を広げてますので」 「……それ、空間魔法」 「料理魔法です」 「そうなの?」 「はい」 「じゃあ、入ろうか」 「どうぞ」 「ん?」 「女湯は女性しか入れません」 「でも、中を説明してくれないと」 「いや、しかし」 「じゃあ、家族風呂を作れば」 「お姉さん、僕の家族になってくれるんですか?」 「うん、いいよ。てへっ」 はうっ! お姉さんの笑顔に胸を貫かれた。 お姉さん、それは僕へのプロポーズですね。 謹んでお受けいたします。 お姉さん、まだ名前も知らないけど、僕はお姉さんを幸せにするよ。 家族風呂を造り、お姉さんと一緒に入った。 「は~、いい湯だね〜」 「そうですね、お姉さん」 お姉さん、いい身体をしている。 「そうだ、まだ自己紹介してなかった」 「そうですね」 「私はメアリー、18歳よ」 「なるほど」 「この孤児院出身なの」 「なるほど」 「孤児院を卒業して、そのまま孤児院に就職」 「なるほど」 メアリーはいろいろと話してくれた。 この孤児院の院長は、職人5人に業務のほとんど全てを丸投げしているらしい。 予算も最低限で食費も足りず、職員が給料から補填しているそうだ。 だから、僕に食事を無料で出してもらうと助かるんだな。 「メアリーさん」  「ん?」 「僕と結婚してくれて、ありがとうございます」 「はい?」 「メアリーと呼んで良いですよね」 「あ、うん。じゃなくて」 「え? 駄目ですか? 夫婦になるのに」 「あのね、嬉しいけど私は18歳なのよ」 「知ってます」 「逆にね、私でいいの?」 「はい」 メアリー、考えているな。 (エンくんは、凄く凄い魔法使いだと思う。元貴族家の息子で本人はまともそうだし。院長からお見合いの話はあるけど、あの院長だしな。変な男に騙されて結婚して不幸になるよりエンくんと結婚したほうが10万倍は幸せよね。うん、よし) いや、メアリー。無限大に幸せだ。 「エンくん、よろしくお願いいたします」 「こちらこそ。あ」 僕は初めて口へのキスをされた。 メアリー、食事の後に歯磨きしたのか?
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