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異世界転生した僕は12歳になり、封印されていた魔法の力が開放された。
この世界は魔素が多いんだ。
今なら分かる。地球の魔素は薄かったんだな。
魔素が少なすぎて、僕の強大な魔法の力が制御しにくかったのか。
「ステータスオープン」
僕のステータスを開示した。
目の前にはタブレットの画面のように、僕のステータスが表示されている。
「なるほど」
こっちの世界で魔法が使えなかった僕は、魔法についていろいろと調べていた。
農民の息子だった僕では、そんなに多くの情報は調べれなかったけど。
でも、僕の知る限り、僕のステータスは史上最強かもしれないな。
この世界では魔法が全て。
僕は望めば国王にもなれるかもしれない。
しかし、そんなものを僕は望まない。
僕が望むのは……日本で食べてた料理を食べたい!
特に、ばあちゃんの手料理を食べたい!
ばあちゃんは料理に魔法を使っていたんだ。
安い食材で作った普通の料理を、魔法ですごく美味しい味にしていた。
そう、ばあちゃんは安くて美味い町の定食屋をしていたんだ。
じいちゃんは僕が生まれる前に亡くなっていたし、両親は離婚して母さんに僕は引き取られた。
でも、その母さんも僕を残して何処かへ消えた。
そんな僕を、ばあちゃんは定食屋をしながら育ててくれた。
ああ、ばあちゃんの手料理が食べたいな。
僕もばあちゃんと同じだな。目立つのは好きじゃない。
小さな定食屋を開いて、家族ができたら仲良く暮らすんだ。
ばあちゃん、僕は誓うよ。
僕の魔法は料理と家族のためだけに使う。
そう、僕は決めたんだ。
さて、まずは朝食だな。
はっきり言って、こっちの世界の料理は不味い。
よくもまあ、今まで食べていたもんだよのレベル。
「母さん、今日から僕が料理をするよ」
「え? どうしたの?」
「魔法が使えるようになったんだ」
「ええ!? 本当に?」
「うん。料理魔法」
「料理魔法?」
「そう、料理に関することだけに使える魔法なんだ」
「それは……便利そうね」
「だよね」
母さん、そんながっかりした顔をしないでほしいな。
まあ、どうせなら貴族の社会でも出世できる魔法が良かったと思うだろうけど。
でも、僕は小さな定食屋の主人で満足なんだよ、母さん。
「じゃ、じゃあお願いしてみようかな」
「うん、任せてよ。母さんは他の用事をしてて」
「そうね、助かるわ」
さて、まずは調理器具と調味料だよな。
あ、台所もついでにリフォームしよう。
僕は、ばあちゃんの定食屋の調理場をイメージして魔法を使った。
一瞬でリフォームできた。
懐かしい、ばあちゃんの定食屋の調理場だ。
食材も日本の食材に似たものを魔法で再構築し、魔法で切ったり煮たり焼いたり味付けしたり。
味噌汁、鮭の塩焼き、白米のご飯、玉子焼きが完成した。
もちろん器も日本仕様だ。
こっちの世界でも箸を使っていたから良かった。スプーンとフォークとか、手づかみだったら困ってたな。
食卓へ並べるのも、もちろん魔法で。
家族がみんなやってきた。
「おい、これをケリーが魔法で作ったのか?」
「そうだよ」
「いい匂い〜」
「ふーん、兄貴が魔法でね」
「美味しそうね、食べましょう」
さて、味はどうだろう。
「……う、ううっ……」
僕は泣きながら食べた。
これは、忘れようと思っても忘れない。ばあちゃんの味だ。
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