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松平善幸が藤五郎の前から身を引いた。
「あっははははっ、其方、おもしろい事を言う奴じゃな。
巷の噂は、単なる噂に御座るよ。気にかけずとも良い。
なれど、儂は甘い物に目が無い故、月に一度は、喜楽堂の饅頭を持って、賭場に遊びに参れ。すぐにとは言わぬが、喜楽堂の他にも甘い物を欲しくなる事もあり得る。その折りには、聢と礼をいたそうと思う」
松平善幸は、暗に、抜け荷の請け負いを承諾する旨を藤五郎に示した。
藤五郎は、松平善幸の横にある菓子折を、松平善幸の前に戻し、
「では、今宵は賭場にて遊び、来月、また、饅頭を持参いたします・・・。
次回は、さらに、饅頭の数を増やしましょう・・・」
と言って松平善幸に饅頭を勧めた。
「うむ。では」
「はい」
松平善幸が饅頭を手に取ると、藤五郎も饅頭を取った。二人は笑いながら、饅頭を食った。此度の菓子折は饅頭二十個だ。次回の菓子折は二箱にしよう・・・。
藤五郎はそう思った。
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