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睨んでもまだ動き続ける手をガシッと掴み、いざ抗議してやろうと口を開けると、それより先に反対の手で塞がれてしまった。
「グュエ」
ふっざけんな、何しやがる!
アンタのせいで哺乳類とは思えないような声が口から飛び出したわ!
そんな思いを込めて再び睨むと、会長は茂みの向こうを見て、何やら人差し指を唇に当てた。
イケメンはそんなポーズも様になるなぁ、という的はずれな考えを抱きながらも、会長同様に茂みの向こうを覗くと
なんと!
副会長が向こうから歩いて来たのではないか!
副会長イベントktkr!!
邪魔な会長の手を取り払って、時計を見ると授業開始まで後1半時間!
もう小1時間経った事に驚きながらも、双眼鏡を構え副会長の向かう先の校門を見やると
発見!黒いもじゃもじゃ!!
登ってる!
あのデッカイ校門を本当に登ってるよ!
なんか感動……!
ちょっと会長……不審者って呟かないの……
……ハッ!
何故ここに会長がいる……?
まさか、転校生が気になって……?
ちょっとそこん所kwsk!!
あ、副会長が門前に到着!
周りを見渡して誰も居ないことに首を捻りながら、時計を確認した!
だけど、当の本人は門の上で今にも落ちて来そう!
このままぶつかってしまいそうだ!
あの高さで落ちたら、落ちる方も敷かれる方もカスリ傷じゃ済まされなさそうだけど……
……恋にちょっとの犠牲は必要だよね!
ハラハラドキドキワクワクで見守っていたら、綺麗に一回転したマリモが門からスルスル降りて来た。
お前は猿か!ってツッコミたくなるほどの手慣れさで、副会長も目を張って固まってた。
ふぅっと満足げに息を吐き、達成感に満ちた顔でぽんぽん校門を叩きながら、いい門だったと呟くお猿……コホン、転校生。
あ、ようやく動いたかと思ったら副会長が吹き出した。
激レアショット……パシャ(無言カメラ)
副会長声出さずに笑うタイプなんだ……ずっと肩震えてるけど……
わざとらしく咳をして転校生の方に向き合った、瞬間また吹き出した。
副会長の方に向いた転校生が怪訝そうに見上げて、我に返った副会長が姿勢を直し、ニッコリと完璧な笑みを披露する。
「おはようございます。本日転校予定の倉木 歩夢様で間違い無いですね?」
「おはよう!おう、はいそうだ!です」
「おや、でしたら安心しました。不審者騒ぎになってしまっては、仕事が増えてしまいますので」
「おう!良かったな!です」
「……倉木さんはとてもユニークな方ですね。ですが、誰も登らない門に登ったのでお疲れでしょ?次回からは門の右に着いているインターホンを押して貰うか、お渡ししている電話番号に掛けて頂く貸してもらったら、 簡単に校内に入れますので、もう疲れずに済みますよ」
「おう、分かった!わざわざありがとうな!お前良い奴だな!あ、です」
「……。えぇ、ありがとうございます」
うわっ、副会長の笑顔がブリザード級になってしまったよ……確かに王道転校生は敬語ド下手な空気読まないが定番なんだけど…僕の求めてたもはこれじゃない!!
甘さがなく寒さしかないのは聞いてない!
……いや!まだ希望は残ってる!
笑顔について指摘すればきっと、雪が溶けて副会長に春が訪れるんだー!!…きっと!
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