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副会長はニコニコ、転校生はにこっにこっ。
傍から見たらのほほんといい雰囲気が流れているように見える。
だけど!
副会長の表情からかけ離れてミリも笑っていない目と吹き出すブリザードに、冷や汗が止まらない。
転校生!頼む!!
今だ!
今こそあの魔法の呪文を唱えるんだ!!
副会長の氷を溶かせるのは貴方しかいない!
僕はカメラを片手に必死に転校生にテレパシーを送り、それが伝わったのか転校生が口を開いた。
「なあ、お前の笑顔って……」
……っ!テレパシー伝わった!?
さぁ、作り物の笑顔を指摘するんだ…………怒らせない程度で…
「すっげえ綺麗だな!です。こんなに整ってバランスよくできた笑顔は初めでだ!!お前すごいな!完璧で隙がないぞ!ジャングルだったら絶対王者だ!カッコイイな!」
ほ、褒めちぎったー!?
え!?
(˙Δ˙; )
いや、まぁ……
初対面で笑顔を指摘するのは結構失礼だし、褒めた方が絶対いいけど…
なんでジャングルが出てくるわけ?
思考斜め45度曲がったかと思えば、さらに15度追加してきたね…
フラグの方は…微妙だけど……どうかな?
「カッコイイ……綺麗でもなく、美人でもなく…………カッコイイ……」
ポツリと呟かれた言葉。
よく見ると周りにお花が飛んでいらっしゃる!?
「倉木さん……私の笑み、カッコイイですか…?」
「ああ!超強くて、カッコイイぞ!俺にも教えてくれ!」
「フフッ、おや。倉木さんは大変面白い方で正直な方ですね。気に入りました。ああ、申し遅れまして、すみません。私は2年の志保悠佑と申します。一応、生徒会副会長を務めさせて頂いておりますが、気軽に志保とお呼びしても構いません。」
わー、副会長さんエンジン全開だね!
笑顔がとても楽しそうで、かっわいいー!
カッコイイって言われて嬉しかっただね!なんという受け属性をありがとうございます!(連写)
「おう!志保先輩!俺を弟子にしてくれ!頼む!です!」
「先輩……!…………コホン。おや、仕方ありませんね。あなたの熱意にお応えしなければ、それこそ漢じゃありませんからね。いいでしょう、師匠を完璧に務め上げて見せましょう!」
「志保先輩!すげぇ!カッコイイ!一生着いでいくぞ!です」
うーん……日本には終わり良ければ全て良しと言うことわざがあったね。
うん、なんか色々ツッコミたい気もするけど!
なんかもうこれでいいや!
副会長は受け!
転校生は天然!
今日もご飯を美味しく頂けるよ!
なんかホッとしたのか、気が抜けて眠気が一気に襲いかかって来た……
…瞼が言う事聞かない……
ねむ……い…………やば、
まるで立ちくらみしたかのように、身体から力が抜けて座り込んだまま後ろに倒れていくのが分かるが、眠気に抗えない体は言う事を聞かずに指がピックリ動くだけで重力に逆らわない。
ぼんやりとした思考の中で、ポッスンという軽い衝撃を感じた後、背後から柔らかく包まれる。
……暖かくて…………いい匂い……
……こ、れ……好き………………かも……
それを最後に脳が思考をやめ、深い眠りに誘われるままに暖かさに包まれながら沈んでいた。
まどろみの中、何かが柔らかく唇に触れた気がした。
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