怪盗は来たか

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The year's at the spring, (時は春、) The day's at the morn; (日は(あした)、) Morning's at seven; ((あした)は七時、) The hillside's dew pearled; (片岡(かたをか)に露みちて、) The lark's on the wing; (揚雲雀(あげひばり)なのりいで、) The snail's on the thorn; (蝸牛(かたつむり)枝に這ひ、) God's in His heaven, (神、そらに知ろしめす。) All's right with the world! (すべて世は事も無し。) 「すべて世は事も無し。――これに勝ることはない」  満足気に、花のように微笑む如月に、仁礼はやれやれと口元に苦笑を刻んだ。 「非凡な顔をして平凡を愛する男だな。そんなだから、怪盗にも(ないがし)ろにされるんだ」 「蔑ろ、大いに結構。怪盗の関心なんぞ欲しくもない。僕は正義と理性による安定を愛するんだ」  そして、柳特製のプリンも。  顔には出さなくても、柳もこの数日の警察と記者との攻防には相当辟易していたようで、彼らが姿を消してから非常に機嫌がいい。だからテーブルの上には、今日も如月の大好物が載っているのだ。  起き上がってスプーンを取りながら、如月は付け足した。 「それに、犯人の予告は果たされているよ。『櫻』は偽客(サクラ)だと考えれば」
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