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僕の前に一本の道がある。
父さんと母さんが僕の為に用意してくれた綺麗に舗装された一本道。
「悠真、お前は将来医者になりなさい。父さんは諦めてしまったが、お前なら必ず立派な医者になれる。その為には一生懸命、沢山勉強をするんだぞ」
「悠真、お父さんとお母さんはあなたのことを応援するからね。これから先学校も塾もお母さん達があなたにぴったりな所を選んであげるわ。だから悠真は勉強にだけ打ち込んでね」
「学校だけじゃない、付き合う友達もちゃんと父さん達が選んでやる。賢いお前には賢い友達しか必要ないからな」
「物騒な世の中だから門限を決めましょう。夕方6時までに家へ帰ってくること。これでお家でも沢山勉強が出来るわね」
「悠真、これは全部お前のことを思っているからこそ親心で言っているんだぞ」
「ええ、そうよ。悠真、あなたはお父さんとお母さんの言う通りにしていればいいの。そうすればとても幸せな人生を送ることが出来るわ」
幼い頃から何度も何度も何度も何度も言われ続けてきた言葉。僕はいつもそれに笑って答える。
「父さん、母さん、ありがとう」
僕の行く道は父さんと母さんが決める。
僕の行く道に僕の意思は反映されない。
僕は僕の道を行く──だけどこの道は本当に“僕の道”なのだろうか?
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