僕だけの灯台

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 年齢は同じくらいだろうか。美しい横顔から推定したが、上下黒の大きめジャージからは確信できなかった。長い黒髪もプラスされ、空気のこもる空間では暑そうに見える。隙間から覗く白い肌には不自然な痣があった。  突然の遭遇に唖然としていると、少女が僕を見やり――素っ気なく目を逸らした。何事もなかったかのように海を眺めだす。  さすがに少し驚き、しかし様子は伺いつつ近付く。視界の端に入り込めたのか、少女は目線一つ寄越さず端に寄った。避けられているのか優しさなのか、探りながらも座る。だが、凝視は気色悪がられてしまうと、海を見る演技のもとチラチラ横を見た。  結局その日は、視線同士を掠めることすらなかった。    少女のせいで、新たな問題ができてしまった。しかも、原因が灯台にあるのだ。行けば解消される問題ではない。席を譲る選択肢もあるが、シンプルに愛すべき空間を放したくなかった。  またあの子がいたら、どうやって接しよう――脳内でシュミレーションしては、何かが違うと首を振った。
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