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海まで染めていた、夕日が沈み行く。視界が暗くなる度、カウントダウンされている気分になった。いつも通り、純粋に美しさを楽しめない。名前か学校名か。彼女が消えた時、存在を辿れる足掛かりがほしい。
「あ、あの……!」
覚悟を決めるため、わざと注意を引き付ける。
「……な……な……」
僕へと向いた無表情の上に、疑問符が見えたような気がした。熱気の後押しもあり、汗が吹き出している。涼しい顔の彼女とは反対で、顔まで真っ赤になっている自覚がある。
なんだコイツ、キモい。なんて思われる前に、何か言わなきゃ!
「夏休みがあけたらまた来ますか!」
――結果、飛び出した言葉に自分自身驚愕する。無我のアドリブが上手すぎて、逆に悲しくなってくる。これで首を横振りされたら、僕らの糸は完全に切れるだろう。
ぐるぐると失敗を責めていると、少女が浅く頷いた。瞬間、簡単に頭がホワイトアウトした。代わりに湧いてきた安堵が、僕をへなへなと脱力させる。
あー良かった。これで一命はとりとめた。また彼女に会える。それで十分だ。
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