02.足元の地面を剥がしてみると

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02.足元の地面を剥がしてみると

 老賢人は訴える。  人間が地球の姿というものを考えるとき、地球があまりに巨大な存在ゆえに個々の人間の力では捉えきれません。そのため、われわれ人類は地球の姿についてさまざまな想像や概念を生み出したのであります。  たとえば、地球は平面であると訴える地球平面説なる概念がありますな。  これはつまり、われわれの足元に広がる地面は地の果てまで続く平らな地面であり、地の果てまでたどり着くと崖みたいに宇宙空間へ落ち込んでいると考える説であります。  わたしに言わせれば、この地球平面説なんぞは概念というよりも、凡庸な人間の凡庸な想像力の産物でしかない。悪く言えば愚者の妄想と言った方がより正確であることは言うまでもありませんが。  さらには、地球空洞説というものがある。これは地球平面説よりはいくぶんかは科学的な知識を取り入れている。地球は球体で宇宙空間に浮かぶ惑星であるとの前提に立っているからでありますな。  なるほど、地球が惑星であることまでは良い。けれどもだ、この説では宇宙空間に浮かぶ球体である地球の内部はまったくの空洞だと考える。  つまり、地球の内部には何もない虚無的空間が広がっているだけだという説であります。これも概念ですらない凡庸な人間の凡庸な妄想の類でしかありません。  わたしに言わせれば、地球の内部が空洞であるというのはまったくのまやかしであり、同時に愚者の妄想の類だと断定するしかありません。われわれの足元の地面を剥がしてみると、まったくの虚無が顔を出すなんてバカな話があるかと言いたい。
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