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05.高らかに宣言したい
熱を帯びる老賢人の口調とは裏腹に、道行く人々は老賢人の新発見になど耳を傾けないままに歩いてゆく。道端で演説するような頭のおかしな老人の話など、まともに取り合う方がおかしい。そんなふうに。
それでもなお、老賢人は自らの思索による新発見の演説を続ける。『地球ゆでたまご説』なる珍妙な説が、この老賢人にある種の熱病をもたらしたかのように、興奮を抑えきれない口調で。
わたしは今、地球平面説や地球空洞説で意図的に無視されてきた問題さえも、わたしの『地球ゆでたまご説』で解決できたと訴えたいのであります。
凡庸な人間の凡庸な妄想が生み出した諸説が意図的に無視してきて問題、それはすなわち、この地球を包む大気の問題であります。
地球平面説でも地球空洞説でも、地球と包み込む大気のことはまったく顧みられておりませんでした。大気とはまさにこの地球と分つことのできない密接な存在であるにもかかわらず!
わたしの『地球ゆでたまご説』では、この地球を包み込む大気はすなわちゆでたまごの殻なのであると、声を大にして訴えたい。
つまり、ゆでたまごの外殻がゆでたまごの白身や黄身を覆って保護する役割を果たすのと同様に、地球の大気は地球を覆って地球を保護する役割を果たしているのであります。
ゆえに、地球の大気はゆでたまごの殻そのものだと言えるのではないでしょうか。
以上のことから、今ここにわたしは『地球ゆでたまご説』を高らかに宣言したいと思うのであります!
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