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意外な関係。
「ハイハイ。優斗さんは意外と狭量なんですねぇ~」
苛立つ宮ノ内を軽くあしらう華野崎に驚きを隠せない愛華。
「えっ⋯蓮とか優斗さんとか⋯あんた達知り合いなの?」
「へぇ~?愛華は本当に何も知らないんだね?」
華野崎はゲームをやめてスマホをソファーに放り投げると、興味深そうに愛華の前に座る。だが、それが面白くない宮ノ内も負けじと愛華の横の席を陣取る。
「俺の母親が優斗さんの姉だから、優斗さんは叔父になるんだ~」
「華野崎は主に不動産事業を行なっているんだ。」
蓮は華野崎財閥に嫁いだ宮ノ内優斗の姉、華野崎(旧姓宮ノ内)優佳子の長男らしい。それは学校で自由が効くわけだ。
(次元が違い過ぎてついていけないわ⋯)
「ああ、また面倒臭い奴と関わってしまった⋯!!」
そう言って頭を抱える愛華に、更に興味が湧く華野崎。
「面白いね、愛華は。俺と仲良くなりたくないの?」
「ええ、全く」
キッパリと断る愛華に満足そうな宮ノ内。
「いや、あんたとも関わりたくないから」
「優斗さんにこんな事言う女初めて見たかも⋯」
宮ノ内に対して辛辣な態度をとる愛華に驚くと共に尊敬の眼差しを向ける華野崎。
「蓮、愛華をそこらの下等動物と一緒にしないで下さい。」
「下等動物って⋯もういいからアンタは仕事に戻って、先輩は授業を受けてください!」
暫くして宮ノ内を探していた香坂が理科準備室にやって来た。が、そこで見たのは高島愛華が宮ノ内優斗と華野崎蓮に説教している信じがたい光景だった。世界的実業家である宮ノ内優斗と華野崎財閥の跡取りで、稀代の天才児と言われる華野崎蓮が床に正座させられている。
「何をなさっているんですか!!」
香坂が急いで二人を立たせようとしたが、高島愛華に怒られて嬉しそうな宮ノ内と華野崎の姿を見て唖然とする。
「あ、イケオジ!早くこの二人を連れて行ってよ!天使と悪魔に見られて勉強に集中できないの」
「⋯は?天使と悪魔?」
愛華のイケオジ発言に爆笑している華野崎。
「この顔見てよ!!顔だけは天使の様な外見でしょ!?そしてこの人は見た目も中身も悪魔みたいな男だし!!」
財界の大物達を指差して熱弁する愛華に開いた口が塞がらない香坂。
「優斗さん、愛華は本当に面白いね」
涙を流しながら爆笑する華野崎を見て更に驚く香坂。華野崎蓮は幼い頃から何をやっても完璧で、稀代の天才と呼ばれ宮ノ内優斗以来の寵児再来と言われていた。だが、彼は誰にも心を開かず、誰にも興味も無かった。なのにも関わらず人間味が溢れている今の華野崎蓮の姿に香坂も宮ノ内ですら驚いていた。
「じゃあ、ちゃんと授業受けてくるからお昼一緒に食べよ~!」
「目立つから嫌です。」
「愛華は私と食べるから駄目です。」
「え~!優斗さんだけずるい!俺も入れてよ~!」
「おい、話を聞け!私はあんた達と食べません!!今日も明日も明後日も!」
正座させられて怒られ、辛辣に扱われても何故か凄く楽しそうな二人に、愛華は絆されてしまい誰にも見られない理事長室での昼食を渋々許可してしまう。約束を取り付け、満足した華野崎が先に教室に戻り、ここの鍵を愛華が預かった。それからすぐに香坂と共に宮ノ内が出て行った。
(ああ、やっと静かになった⋯)
とてつもない疲労感がどっと愛華を襲うが、今がチャンスだと勉強に集中する。だが、人気が無いはずの廊下でこちらに歩いて来る足音が聞こえてきて、この理科準備室の前で止まった。
(今後は何!?華野崎先輩が戻ってきた?)
そんな事を考えていると、準備室のドアが静かに開いた。
「⋯えっ?⋯あんた誰?」
そこに立っていたのは黒髪を綺麗に巻いて、メイクバッチリな今時の女子生徒だった。
「あっ⋯高島です。ここで自習をしてます。」
「はぁ!?ここは蓮の部屋だし、何で入れたの!?」
「華野崎先輩に鍵を開けてもらいました」
愛華の発言を聞いて、目を見開き驚く女子生徒。
「蓮がここに誰かを入れるなんてあり得ない!!蓮はどこ行ったの!!」
「えっ⋯教室に行きましたけど⋯」
「何言ってんの!?蓮が教室に行くわけないじゃん!」
「そう言われても⋯本人に聞いてみて下さい。教室にいると思いますので⋯」
「もし嘘だったら許さないからね!?」
女子生徒は愛華を睨みつけながら準備室を出て行った。
「嘘⋯何で教室にいるの⋯」
先程の女子生徒、相澤夕梨花が教室に戻ると皆の注目を集めながらも平然としている華野崎蓮の姿があった。
「蓮!!」
呼ばれた華野崎は夕梨花を見る事なく、スマホでゲームをしている。
「何で教室にいるの!?」
「生徒が教室にいたら駄目?」
「そうじゃなくて!蓮の部屋にいたあの子は誰?」
「⋯あの部屋に入ったの?入るなって行ったよね?」
華野崎は初めてスマホから夕梨花に目線を移したが、先程の天使の様な顔ではなく無表情で人間味が無い冷たい顔だった。
「いや⋯でも知らない子が入っていたから!」
「俺が入れたの。何か問題でもあるの?」
「はぁ!?彼女の私も入れてくれないのに何であの子を入れたの!」
夕梨花がそう言い放った瞬間、華野崎が持っていたスマホを思いっきり床に叩きつけた。静まり返る教室で、生徒は勿論教師すら何も言えずに下を向いている。
「うるさい。俺が誰を入れようとお前に関係ないだろ?彼女だったんだ、じゃあもういいや。バイバイ」
そう言うと、華野崎はもう二度と夕梨花を見る事はなかった。
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