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第一章 死
死んだ。
私には、すごく大切なペットがいた。
犬の、ペロという名前だった。
温かくて、可愛い、ペロが大好きだった。
「ペロ!」と呼ぶと、おもちゃそっちのけで私の方に飛んできてくれた。
食べ物に好き嫌いはなくて、
人に会っても、他の動物に会っても、怖がったりしなかった。
いつも元気で、イタズラばっかりして、
寝ている私のおなかの上に、ドン!と急に乗ってくる。
「やめてよ〜」と笑いながら言うと、
ペロは私の顔をペロペロして、最後に「ワン!」と大きく吠えていた。
彼氏にフラれた時も、塾の先生に怒られた日も、
体に怪我をして帰ってきた時も、
ペロはいつも、顔をペロペロしてきて、最後に「ワン!」だった。
小麦色で、モッフモフの体に顔を埋めれば、
誰にも知られず泣けた。
「お手」も、「おすわり」も「バーン!」も、
すぐに完璧に覚えた。
私に一番懐いてくれていた。
私の隣に寝そべっていた。
私は、ペロをじっと見ていた。
ペロは、私の顔をペロペロした。
最期の「ワン!」は、思ったよりも大きな声で、びっくりした。
でも、ペロにはもう会えない。
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