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第六章 心
体が段々と暖かくなっていく。
胸の中心から、ポワァッと暖まって、
全身をギュッと包まれるような安心感に、ため息が出る。
わたしを呼ぶ声が聴こえる。
同時に、さよならを告げる声も聴こえる。
寂しい気持ちと、懐かしい気持ち、温かい気持ちが、
入り混じって、体全部が訳わかんなく苦しくなる。
でも、私の体は、不思議な力に引っ張られて、
抵抗することを許してくれなかった。
「ツムギ!!」
「ツムギちゃん!」
「ツムちゃん…!?」
声だけが聞こえる。
腕も、指先も、瞼も、全身が動かなかった。
『ありがとう!ゆっくりこっちにおいでね!』
そんな声も、どこからか聞こえてくる。
ペロ…!ペロ!ペロ!ペロー!
何度も何度も叫ぶのに、声が出ない。
誰も返事をしてくれない。
みんな、私の名前ばかりで、ペロの話をしてくれない。
「ペロはどうなったの?」
今すぐそう聞きたいのに、誰も私の声を聞いてくれない。
こんな時、いつも私の話を聴いてくれるのがペロだったな。
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