お花摘みと知らない王城

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お花摘みと知らない王城

 真夜中。慣れていないベッドだからか、目が覚めた。ん――私はみんなを起こさないよう……そっと、寝室を抜け出した。 (トイレ、トイレ……)  この家のトイレは元の屋敷とは、逆の位置だという事を忘れていて。いつものように進み、見えてきた扉を開けた。  ⁉︎ 「どこ?」  中にはトイレがなく、どこかの廊下だった。  驚きで目が覚めて、え、えっと、あたりを見回す……ロウソクの明かりがいくつも壁に灯り、天井からぶら下がるシャンデリアと、壁にかかる何枚もの絵画。  ここ。    なんだが王城の中っぽいが……王妃教育に通っていたローレンス城とは違う。見るからに高い天井、身長が150センチくらいの私の2倍はありそうな大きな扉と壁、どれを見てもサイズが大きい。  どこの城? だと。ポーッと眺めていた私を、誰かが見つけ声を上げる。 「うおっ⁉︎ 魔女様の扉が開いてるっす!」  トテトテと足音を出して、こっちに走ってくるのは、鎧と手に槍を持った黒猫⁉︎  もしかして……獣人さん⁉︎  私はどうしたらいいのか分からず、初めて見た獣人にただ驚いていた。   ❀  私よりも高い身長の黒猫は、ジロジロ私を見下ろして「これが人間から魔女様になった人か……へぇ」私に好奇心に満ちた琥珀色の瞳を向けた。 「…………」  驚きで、声が出ない私に。 「おーっと失礼しました。あいさつが遅れました、こんばんは魔女様――中でお茶でも致しませんか?」  ニッコリ笑い、私の手をモフモフの手で掴もうとしたが。その手を、横から真白で艶のある手が掴んで引き戻した。 「はい、ストップ。マージアさん、入ってはダメよ。そして、あなたもまだ慣れていないマージアさんを、連れ込もうとしない!」  注意を受けた黒猫は不貞腐れる。 「ちえっ、中で、人間をじっくり観察したかったのに。まっいいか。ボアさん、上には報告させていただきます」 「えぇ、わかったわ。それとお披露目はもう少し後だと言うことも、伝えておいてください。マジーアさんはまだここに来たばかりで。彼女は元人間だから、ゆっくりシシリの魔力を体に馴染ませないと、魔力が暴走してしまうかもしれないから」 「はい、かしこまりました。おやすみなさいませ、魔女様、ボア、良い夢を見てくださいっす」 「ありがとう、おやすみ」  驚いている間に、パタンと目の前の扉がしまった。 「ふぅ、この扉が出現したのは……マージアさんの魔力が安定していないからね。来たばかりだものしかたがないわ」  ボアさんに魔力の暴走とか、扉の事を聞きたかったけど……限界、漏れそう。「トイレどこ?」だと。慌てだした私をボアさんが手を引いて、トイレに連れて行ってもらったのは……言うまでもない。
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