獣人の王子

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獣人の王子

 ……ふぅ、間に合った。 「マージアさん終わりましたら、右側の壁に埋まっている、青い魔石に手をかざしてくださいね。ふわぁっ、私は戻って寝ています、ごゆっくり」 「はーい」  トイレの中は広く洋式便座に変えていたので、使い勝手がいい。終わったあと、ボアさんの言っていたとおりに、壁に埋まった青い魔石に手をかざした。青い魔石が光り、水が流れた……こ、これはっ! もう一度、石を触って水を流した。 (なんて、楽ちんなんだぁ!)  もう一度……いい! 自分で水を汲んで流さなくてもいいなんて、感動! 手洗い場をオシャレな洗面ボウルにもしてみてし。トイレットペーパーまで想像で出るなんて……創造魔法って便利だ。  寝室に戻り、私はみんなを起こさない様にベッドに潜り眠った。この夜――私は丸いモフモフを捕まえ、もふもふに埋まった、幸せな夢を見たのだった。 (もふもふ、最高!)      パチッ……ふぅ、日課とは恐ろしい。  いつも通り、早朝5時に目が覚める……すでに婚約も破棄されて、王妃教育もないというのに。長年にわたり体に染み付いた規則正しい生活は、そう簡単に抜けないようだ。 (……王妃教育は厳しかったけど、けっこう楽しめた)  私の隣でボアさんと、ベッド上のキキ達はまだスヤスヤ寝息をたてている。気持ちよさそうに眠る彼女達を見ていると……眠気がおそってきた。  2度寝しても、誰にも怒られない。  朝の面倒な支度だってない。  と、私はもう一度、ベッドに沈んだ。  ❀      十分2度寝を楽しんで目を覚ましても、みんなはまだグッスリ夢の中。時刻は8時……お腹も空いてきたことだし、朝食の準備を始めるかな。  みんなを起こさずソッとベッドを出て、キッチンに向かった。髪をサッと下でゆい、手を洗い、アイテムボックスをひらく。朝食に使う、卵、ベーコン、ソーセージ、レタス、トマト、玉ねぎを取り出した。  朝食はパンと、ベーコンエッグとソーセージを焼いて、サラダと、タマネギのスープ!    まずタマネギのスープと、レタスとトマトでサラダを作り。卵、レモン、塩コショウ、オリーブオイルで前世でよく作っていた――簡単なレモンマヨソースも作った。 「おはよう、マージアさん。美味しい匂いがする」 「お、おはようございます、ボアさん」  すごい寝癖のボアさんと、まだ眠そうなキキ達もキッチンに現れる。 「キキ、スイ、メラ、おはよう!」 「おはよう、マジーアちゃん」 「おはようございます」 「おは」  みんなが集まったので、フライパンを火にかけてベーコンエッグ、ソーセージ焼き、塩コショウで味付けをした。  全ての料理ができて、あとはお皿に盛るだけ。  目玉焼きベーコン、ソーセージはフライパンのまま、ドンとテーブルの真ん中に置き。人数分のパンと玉ねぎスープをよそい。サラダは取り分けせずボールのまま、レモンマヨソースをかけてテーブルに並べた。 「さあ、食べましょう!」 「「はーい!」」  みんなが木製のテーブルに着く、それを見て私もテーブルに座ろうとした。  そのとき。   「「おはようございます、魔女様! いまから私と従者2人と森を越え、そちらにお伺いしてもよろしいか?」」    朝から爽やかで、グラグラ家を揺り動かす大きな声が、何処からか響いてきた。 「え? な、何?」 「うおっ?」 「きゃっ!」 「およっ!」 「ハァ、やはり……我慢できませんでしたか」 「我慢?」  ボアさんを見ると、困った表情をしていて。 「……ふぅ、獣人の王子は、マージアさんをひと目見たいのね」  と言った。  
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