おはぎと渋めのお茶

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おはぎと渋めのお茶

 離してとも言えず、レオン様に握られたままの手。スズ君はニヤリと笑って、レオン様に近付き。 「レオン様、マージア様に特別な、お土産を持ってきたっすよね」   「あ? ああ、そうであった」 「すみません……尻もちレオン様を助けるのに夢中で、玄関に置いたことを忘れていたっす!」 「スズ! それを言うな!」  ククッと笑い「取ってきます」と、スズ君が取りに行き、戻ってきた彼が手にしていたのは……馴染み深い、唐草模様の大きな風呂敷包だった。  スズ君とトッポ君は「テーブルを開けます」と言い、空いた皿を流し台に片付けて。 「これは獣人の国で大人気、田中屋さんのおはぎとお団子、梅のおにぎりと緑茶の茶葉です」  と、大きな2段の重箱の蓋を開けた。  お重の中の一段目には粒あんと、こし餡の一口おはぎ、みたらしと、こし餡の乗ったお団子。2段目に梅のおにぎりと、緑茶が入った茶筒と急須が入っていた。 「美味しそう、ありがとうございます」  でも、田中屋さんって……名前もそうだけど。  おはぎ、お団子、梅のおにぎりって……もうそこの店主、絶対元日本人かな。   「どうぞ、食べてください」 「「いただきます!」」    ボアさんは小ぶりで可愛い、一口おはぎをフォークでお皿に取り、うっとり眺めた。 「このキレイな見た目。私、田中屋さんのおはぎ大好きです」 「わたちも好き!」 「おはぎ美味しいですよね」 「あんこ、あんこ!」  キキ達が選んだおはぎを、お重からみんなのお皿に移した。その足で「お茶を淹れますね」とお鍋でお湯を沸かして、貰った茶葉を急須でいれる。そのとき、ふわっと香っる懐かしい、お茶の香りにホッコリしていた。  その姿にスズ君は。 「おお、マージア様は凄いっす! 初めて見たはずの、緑茶の淹れ方を知っていたんすね」 「そうだな」  ――あ、しまった。 「えっと、この茶葉……緑茶と言うのでしたっけ? みためが紅茶の茶葉に似ていたので……淹れてみましたの、オホホホ」 「凄いっす!」  とりあえず笑って誤魔化した。  緑茶を飲むのに、湯呑みが欲しいところだけど無いので、紅茶のカップを人数分だして、お茶をそそいだ。みんなにお茶を配って、私もおはぎをいただいた。 「いただきます」  ん! んん⁉︎ 懐かしいアンコの甘さに、渋めの緑茶がピッタリ。 「おはぎ美味しいです! レオン様、スズ君、トッポ君、ステキなお土産ありがとうございます」  あまりの、おはぎの美味しさにお礼を伝えると。  レオン様は眩しすぎる、笑みを浮かべた。 「よかった、田中屋にして正解だったな。スズ、トッポ、私たちは魔女様にとって、よい土産を持ってきたようだ。まだまだ、魔女様には食べてもらいたい食がある」 「レオン様、次はマージア様をデートに誘うっす!」   「デート⁉︎」 「デート⁉︎」  スズ君の発言に、レオン様と私の声が重なる。 「あら、いいわね。でも、デートはマージアさんの魔力が安定するまで、少し待って欲しいわ」 「そうか、わかった。また、私達が土産を持って、ここに遊びに来れば良い」 「そーっす!」 「いいですね」    ❀      みんなとの楽しい、ひとときを過ごしていた。  突如、レオン様達の耳が――何かの音にピクンと反応する。そのあと、ボアさんとキキ達は玄関を見て警戒しはじめた。 「魔女様、この家に誰か来るようだ」 「はい、誰が来まっすね」 「もう直ぐ、家の前に馬車が止まります」 「えっ?」  テーブルを立った私を見て、ボアさんが近寄り、私の手を握る。 「平気よ、こっちとあっちは次元が違うから、マージアさん安心してね」 「う、うん」 「マージアちゃん、大丈夫」 「大丈夫です」 「へいき、へいき」    ボアさんが口早く教えてくれる。  私達の目に映るこの家と――今から訪れる誰かにこの家はボロ屋にしか見えず、私たちの姿も見えないと。
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