訪れたのはヒロイン⁉︎

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訪れたのはヒロイン⁉︎

 しばらくして、一台の馬車が家の前に止まった。みんなは食事の手を止めて、玄関まで見に行くと言ったので、私もみんなの後に着いて玄関に向かった。  玄関横の小窓から見えたのは、車輪の付いた箱と馬と、人の真っ黒なシルエット。――それはまるで影絵のように見えた。   「それはね。マージアさんに昨日私たちが昔、人の奴隷になっていたと説明したわね」   「はい」 「私たちの中には人間を恐る者もいるの、外の世界は全て影絵の様に見えるよう、魔法がかかっているの」     だとしたら、この馬車に乗って来たのは誰?    御者らしき人が操縦席から降りて、馬車の入り口を開けた。馬車の中から一人もう一人と降り、二人は馬車の入り口で、向かい合って足を止めた。 「レオン様、あの人間達はこの家に用があるようですね」 「そうだな……ボア、今後のこともある、この者達の姿が見えるよう頼めるか?」 「かしこまりました」  レオン様の命令で、ボアさんは指をパチっと鳴らす。黒い影絵から……はっきり訪れた人物が見えるようになり、私はその人物を見て息を飲んだ。  ーーなぜ、この人達が?  ここに訪れたのは学園で一緒だった、魔法使いアッサン様と騎士マッケン様。その彼らが馬車からエスコートしたのは……なんと、ヒロインのススリさん。エスコートを終えたアッサン様はこの家を指して、ススリさんに話しかけた。 「ススリ様……本当に、このボロ屋なのですか?」 「えぇ間違いなく、ここよ」  3人は玄関に移動して、マッケン様が玄関の扉を開けようとしたが「鍵がかかっていて開かない」と、ススリさんに伝えている。 「この扉が開かないですって? 何かあったら私がなんとかするから。マッケン、アッサン何をしてもいいから、この扉を開けて!」   「はい、かしこまりましたススリ様」 「わかった」    私はススリさんの、その乱暴な物言いにカチンきて。 「何をしてもいいから……玄関を開けろ? 見た目はボロ屋かもしれないけど……誰かの大切な所有物だって考えないの?」  思わず、声を出してしまった。   「マージアさん、落ち着いて。外の扉は壊れてもマージアさんの魔力で、しばらくしたら元に戻るから」  元に? 「ほんと? 私の魔力で壊れても元に戻る? ……そっか、よ、よかった……魔女様から譲り受けた大切な家だから……つい、感情的になっちゃった」 「マージアさん」 「ボア、スズ、トッポ、キキ、スイ、メラ、私達はいい人に大魔女様の力が受け継がれた、これからも安心してここで暮らせるな」  みんなは頷く。 「そうなる様、努力はするけど……いまの、私ではまだ力不足だと思う、みんなの力が必要だよ」 「その協力は惜しまない!」   「俺っちも頑張るっす!」 「必ず、力になります」 「あら? 私の方が皆んなよりも力になるわ」 「いいえ、わたち達です」 「そうです」 「うんうん」  私には力強い仲間ができた。    ❀  みんなと息を飲み、彼らの行動を見守っている。  バギッ!と、ススリさんの命令を受けたマッケン様とアッサン様は、この家の玄関を魔法と力任せに破壊した。  そして、彼らはススリさんに危険だからと、外で待つように言い先に中に入る。中を探索する彼らは、剣で魔法で開かない扉を全て破壊しながら……家の中を土足で歩き回った。全ての部屋を確認して「何処も埃だらけ」「長年放置された家だ」と、言っている声が聞こえた。  アッサン様が外で待つススリさんに。 「ススリ様、何もありませんが?」    と伝えるが。   「嘘よ! この家の何処かに魔法の本があるはずよ! 探して!」 「魔法の本?」 「その、魔法の本とか言う本を探せばいいんだな」  え?  いま、ススリさんが言った。魔法の本とは……私が手に入れた魔女さんの本の事とを、さしているのだろうか?
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