魔法の本

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魔法の本

 どうして? ススリさんは魔法の本の事を知っているのだろう? 私はそんなことを考えながら彼女を見ていた。  ススリさんは家の構造をしているみたいで、迷わず、書庫に突撃した。そして何もない本棚を隈なく探した。  そして。 「無い、無い……おかしい! 本来なら、王城の書庫で見つけるはずのなに、書庫を隅から隅まで探してもなかった。だから……物語が始まる、この場所に来たのにぃ!」  物語り? ススリさんは私と同じ転生者?    だから、全て私のせいにしたのか。  私は学園と王妃教育は楽しんだけど……悪役令嬢に関して、やる気が無くて、彼女にあまり近付かなかった。    今思えば、あの子の行動は辻褄が合う。   「どうして? どうして? ここにも本が無いのよ!」  彼女はゲームではあった『魔法の本』が見つからなくて、イラついている。  ススリさん、ごめんね。何故だかわからないけど……あなたが探している本。私の元家、公爵家の書庫に置いてあって、私が先に手に入れてしまった――絶対に渡さないけど。    本を探して、家の中を歩き回る彼女を「危ない」と2人は止めるが。ススリさんは話を聞かず「あっ」と、声を上げた。 「そうか、わかった! 本の持ち主――大魔女シシリが、私のあまりの可愛さに嫉妬して、意地悪しているのね。シシリ! 本を隠さず、主人公の私に渡して貴方は退場しなさい!」  見つかるはずのない本を探して、彼女の言動が   「この役立たずの魔女が!」 「隠れていないで、出てこい!」 「卑怯者!」    と、言葉汚くなる。 「いい加減して! 出てこい!」  彼女は力任せに寝室の空っぽの、本棚を蹴った。 「……クッ、あの子、ムカつくわね」  彼女の行動を黙ってみていた、レオン様とボアさん達の様子が変わる。   「あの人間――私達を救った、偉大なる大魔女シシリ様の悪口を言ったな」 「えぇ、私の心の友、シシリの悪く言ったわ!」 「言った!」 「言いましたね」 「ひどい!」  ボワっと……ボアさんとレオン様の、怒りのオーラとでもいうのだろうか。緑色と金色のオーラが彼らの体から、ユラユラ立ち上がった。 「ひっ⁉︎」 「やっ?」  それを見たとたん、スズ君とトッポ君は飛び上がり。 「ま、ま、待つっす! ボア様、レオン様、落ち着くっす」   「そうです……今、ここでお2人が暴れますと……マージア様の体に、それ相当の負担がかかります」 「「あっ」」  その2人の言葉にハッとしてオーラを引っ込める、ボアさんとレオン様、だけど機嫌はなおらず。 「フン! 言われなくても、わかっているわ。この家を壊さず、あの子達を追い出せばいいのよね」 「そうっすけど……」 「ですが、ここはいったん抑えて、様子を見たほうがいいと思います」 「わかってるけど、シシリの悪口だけは許せない! シシリは私たちを笑顔にしてくれたの!」  ほんわか見た目のボアさんが。  大切な魔女さんの悪口に、声を上げる。    そんな裏のことを知らない、ススリさんはイラついて、床をダンダンとヒールで踏み。   「おかしい、おかしい! 乙女ゲームの第2弾は私が王城の書庫で魔法の本を見つけて、この家から始まるの! この私が数ある問題を解決して、モフモフたちと仲良くなるのよ!」 (えぇ、第2弾? このゲームに第2弾があったの?) 「どれもこれも、あの女……マージアのせいね。アイツが悪役令嬢をやらなかったせいで、何処かでフラグを落としたんだ……許せないわ!」 「ススリ様、落ち着いてください」     魔法使いマッケン様、騎士アッサン様はススリさんをなだめ。「これ以上、ここにいては暗くなります」「また時間を作って来ましょう」と、馬車に乗せ帰っていった。     「やっと、帰ったな」 「ええ、でも、きっとあの子はまた来るわ」  ボアさんは馬車を見ながら、そう呟いた。     その通りだろう。ススリさんは諦めず、魔法の本を探しに来ると、みんなと一緒にため息をついた。
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