ボロ屋を見つけました

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ボロ屋を見つけました

 凄い、凄いわ! 練習した時より上手く飛べてる! 私は景色を眺め、空の移動を楽しんでいた。  風が冷たくて気持ちいい。  ふうっ、いきなり魔女になっちゃうし。  転生したと気付いてからも、色々あったなぁ。    前世、私は高校を卒業したばかりの、大学生だった。両親は小さい頃に離婚していて、私は父方の祖母に育てられた。その祖母も大学に入る頃には腰を痛めて、父の妹と暮らすことになった。  初めての一人暮らしにワクワクして、趣味のお菓子作り、読書、ゲームを楽しんでいた。  なかでも『恋するキャピキャピパラダイス』通称『恋キャピ』の、乙女ゲームが好きだった。  廊下で転んで乙女ゲームの記憶と、前世の記憶はある程度思い出したけど。私に何が起きたのか分からない。気付いたら『恋キャピ』の、悪役令嬢マージアになっていたのだ。 『わぁ、子供のマージアだ、可愛い!』  そして迎えた7歳。この国の第一王子ビビール・ローレンス王子の婚約者として選ばれた。すぐ王城に呼ばれ始まった王妃教育。ダンス、礼儀、社交、交易など覚えることは大変だったけど……元々、前向き? 余り物事を考えない……私は新しい経験だと、王妃教育も楽しんだ。 「実にいい経験だったわぁ! 隣国の言語、淑女としてのマナー、いろんな事を身に付けれたもの」  ホウキでの移動は快適で、スイスイっと空を移動できる。あの本を制作した魔女さんは、人1人を魔女にできるんだ……とてつもない魔女だったのだろう、スキルとステータスの数値が半端なかった。  だけど……そんなに凄い魔女さんなのに見ず知らずの誰かに、その力を渡そうと思ったのだろう? こればかりは魔女さん、本人にしかわからないこと。その魔女さんの偉大な力を貰った、私が言えることは。    素敵な力と、家をありがとう。  大切に使います……かな。  ❀    数分後。 「ほ、ほんとうに、この家なの?」  屋敷から馬車道をたどり、まっすぐ辺境地まで来たけど……見つけたのは一軒のボロ屋。私はホウキを片手に、そのボロ家を見上げた。  年代物の家だ。 「この家……森と同化して建っていて、レトロで素敵だわ。まあ、屋根は壊れて壁のレンガは崩れ、ガラスも割れているけど……直せばいいの! 家の周りは雑草だらけで……多分、あれは庭と畑ね!」  家の中はどうなっているの?  中も、レトロかな?  ウキウキとアイテムボックスを開き、中から金色の鍵を取り出して、玄関の鍵をガチャっと開けた。   「……え、えぇ⁉︎」      屋敷の書庫で本を触ったときに見た、緑色の葉っぱが散りばめられた可愛い魔法陣が、ボロ家の下に浮かび上がる。その魔法陣からは光るツルが伸び、家全体を覆った。  ――ま、魔法?  私はとてつもない魔法陣を目の当たりにして、乗ってきたホウキを地に落とし、その光景に心奪われた。  ゴクッ  しばらくすると、家を覆う光るツルが消え。  見えてきたのは、雑草しかなかった玄関先にあざやかな花が咲いていた。あの雨漏りがしそうな壊れた屋根、割れたレンガの壁もキレイに直り……割れていたガラスも、どこも割れていない。     はじめ庭と畑かな? と疑問を持った庭と畑にはトマト、キュウリなどの野菜が実り、庭にはラベンダーの花が風にゆらめいていた。  瞬く間にボロ家は……魔女の魔法で息を吹き返して、レトロでオシャレな家へと変貌した。  まさに圧巻!  もう、ワクワクが止まらない、  感動して、鼓動も早い。  ドキドキしながら玄関を開けると、目の前の床に、一冊の革張りの本が置かれていた。 「本?」  その本にはタイトルがなく、鍵もかかっていない。なんの本かと私がその本を手に取ると。  何も書かれていなかった表紙に【この子達をよろしくお願いします】と、文字が浮か浮かび上がり消えていった。  この子達?  いったい誰の事だろう?  ……クスクス  何処からか、クスクス笑う声が聞こえた。  その声は1人じゃない。 (わぁ、新しいご主人様?) (あなたが新しい、私達のご主人様ですか?) (ご主人?)  いきなり本の中から可愛い声が聞こえてきて、本が眩い光を放ち、パラパラと勝手にページがめくれた。  
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