シシリ大魔女

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シシリ大魔女

「ご、500年⁉︎」 「そう、シシリの魔力量はすざましい。マージアさんを魔女にしても、まだ魔力が有り余っていると思う」  ヒェ。底知れぬ魔力の持ち主の。  魔女さん……凄すぎる。 「それじゃ、ボアさん達は魔女さんがいなくなって、困らなかったのですか?」  この家、全てが魔力だけで動いている。    魔女さんがここを去り、私が来るでの間とか。  ボアさん達の生活は、どうなったのか気になった。 「その点もシシリは抜かりないわ。彼女には偉大な魔力を秘めた三人の弟子がいてね。今、その子達が彼女の代わりをしてくれて、自分の森とシシリの森を守っているわ」 「魔女さんには3人の、お弟子さんがいるのですね?」 「えぇ、シシリが言うにはね。ヤンチャ系魔法使い、甘えん坊系魔法使い、真面目系魔法使いだと言っていたわ」  ヤンチャ?  甘えん坊?  真面目?  なに……その乙女ゲームに出てきそうな設定の、魔法使いの弟子は⁉︎   「その子達も、私達と同じでシシリに助けられた子達。偉大な魔力は人をも狂わす。あの子達を守る大人がいなかった。彼らが悪者に捕まり、いい様に利用されていたら……」  ゴクッ。 「キキ、スイ、メラ眠いのなら、好きな場所で寝てきなさい」  心地よい日差しの庭、出したクッキーを平らげた、みんなはテーブルの上でウトウト眠そうだ。 「ゆっくり、おやすみ」 「ふわぁ、い」 「お昼寝してきます」 「寝る、おやすー」  目を擦りながら彼女達は好きな、お昼寝の場所にフワフワ飛んで行った。    ❀    彼女達を見送ったあと。紅茶をいれ直して話を再開させた。ボアさんは森の奥にある里の話をしてくれた。途中「説明するのが難しい」と言ったので、ノートとペンを出した。 「魔法使いと森……四つの入り口ですか?」 「そう、場所は別々で魔法使いの家と森、そして里をセットになっているの。マージアさんの家と森、そして奥にあるのは獣人の国ね」 「獣人の国⁉︎」  獣人と言えばモフモフ……癒しの国⁉︎   「ええ、獣人の国があります」 「へぇ……」  私が魔女さんから譲り受けた家と森。  その奥には獣人の国がある。だけど、ここローレンス国で獣人、亜人種族を、生まれてから一度も見ることはなかった。王妃教育で隣国には亜人種族と、平和に暮らす国もあると習った。  ローレンス国の歴史でも。 「ボアさん。ひと昔、この国は亜人種族と手を取り合い、一緒に暮らしていたと習いました」 「あら、亜人と人間が手を取り合ってね……」    ボアさんの表情が曇った。と、言うことは。  王妃教育で習ったことは……人にとって、都合のいい話だったのかも。 「やはり、歴史は違うのですか?」 「えぇ違うわ。仲良く暮らしていたのは、ほんのいっとき。王が崩御して、新たな王に変わったとたん。仲良く暮らしていた亜人種族を……彼らは捕まえた」 「えっ」 「人間側が戦争をふっかけてきたの。それも卑怯な手で……番を、愛しき者を奪われて、私たちは戦わずに敗北した。そして数百年もの間、人間の奴隷になっていた……」 「そ、そんな……奴隷だなんて」  全然、習っていた事とちがう。  なんだか、悲しくて涙が流れた。 「ああ、泣かないでマージアさん。でも、一人の魔女との出会いが私たちの運命変えた。心が傷付き、感情を失っていた……私達に笑顔が戻った」  魔女さんとの出会いが……みんなを救った、とボアさんは言った。
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