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その場で一周してみたが、辺りには木があるばかりである。
所々に小さな花が咲いているほか、何もない。
辺りに人は見当たらない。
商品も見当たらない。
あるはずのショーウィンドウもなかった。
「……なに? ここどこ? 異世界……とか? ハハハ」
乾いた笑いが空気に溶ける。
どこからか猫の顔でも現れないかと思ったが、残念ながら私の声に反応する者は誰もいなかった。
遅刻しそうなウサギが走って来るとか。
体の大きさが変わる食べ物や飲み物があるとか。
花が喋るとか。
どこかでお茶会が開かれているとか……。
そんな小説みたいなことは、何もなさそうだった。
はたして、私はどうすればこの森から出られるんだろうか。
「……ん? 何だあれ」
立っている道の先に、何かがキラリと光った気がした。
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