歩む

3/7
前へ
/7ページ
次へ
目を開けるとそこにはまた家があった。 今度は迷わずチャイムを鳴らした。 「はーい、どなたかしら」 「あら、希美さんじゃない!」 これはこれは、中里先生じゃないですか。 「お久し振りです。」 「えぇ、お久し振り!」 「もうこっちに来ちゃたのね…」 「そんなことないですよ、先生。  私、100歳まで生きたんですから!」 「おやおや、  そうですか…月日が経つのは早いですねぇ」 これじゃあまるで私が子供みたいじゃない! 家の中はどこからか日の光が差し込んでいて 家の中心にあるキャンバスを照らしていた。 壁には様々な絵のモチーフらしきものが飾られている。 「希美さん、楽しかったですか?」 「えぇ、すごく」 「それは良かったです。」 「先生は?」 「はい、もちろん。楽しませてもらいました。」 「ところで…絵は続けてらしてる?」 「いえ、それが…」 「結婚してからは忙しく…」 「おや!それでは一緒に描きません?」 「はい!」 先生が棚からキャンバスを出してくる。 書きかけのキャンバスの横に並べた。 さぁ、この真っ白な一枚の世界に何を描こう? 「やっぱり久しぶりすぎてなまってますね、  思ったように書けませんでした」 「いえいえ、お上手ですよ。」 「先生、今までありがとうございました!  あの頃、すごく楽しかったです。  絵を描くのも、先生と話すのも、」 「えぇ、ありがとう。私も楽しかったわ。」 「それでは、おやすみなさい。」 えぇ、おやすみなさ…
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加