シュレーディンガーの卵

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「いただきます!」 手を合わせ、すぐさま右手で卵を取る。さぁ、現れろ愛しのキミよ。その輝く姿で私の欲を満たしてくれ!ピキリと心地よい音を立ててひびが入る。そして白身と共に流れ出て来た黄身は実に…! 「…ピンクだ」 私は目を疑った。頬をつねった。顔に冷水を浴びた。ラジオ体操第一を全力でやった。それでも白米の上の黄身はピンク色をしていた。 「訳が分からない」 初めて相まみえる色の黄身に動揺しながら、机の端から恐る恐る箸で突く。反応は普通の黄身と同様、プルンプルンしている。今度は思い切って顔を近づけて匂いを確認してみる。 「…ほのかにイチゴの匂いがする」 食べれない事はないだろうがもはやこれは私の求める卵ではない。というか卵と言って良いのかも怪しい。 「ふふ、しかしどうってことない。まだ卵は9個も残っているのだ。一個くらい良く分からないものが混ざってても構わないさ」 ピンク色の黄身を小皿にどけて、もう一つ卵を手に取った。
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