シュレーディンガーの卵

4/9
前へ
/9ページ
次へ
しかし次こそ普通の卵だろうか。それとも何かまた良く分からないものが出るのか。混乱と空腹と欲求不満で視界がぐるぐると回る中、次の卵を手に取る。そして慣れた手つきでご飯の上で割った。黒い球体が白米に乗っかる。あぁまたか、と呆れるのと同時に何かが焦げる臭いが鼻を突いた。嫌な予感がして、立ち上がって逃げ出そうとした時にはもう遅く、黒い球体は派手な音を立てて爆発した。黒煙が部屋を包み、私は漫画でしか見た事のないくらい真っ黒になっていた。そこからはハッキリとした記憶がない。ただ、半狂乱になって残りの卵を割り続けていたのだけはよく覚えていた。 数分後、インターホンの鳴る音で私は正気を取り戻した。よろよろと玄関まで歩いていき、ドアを開ける。そこに立っていたのは友人だった。 「大丈夫かおまぁ…?どうしたんだお前、そんなやつれて」 息を切らせながら訪ねて来た友人は、驚いた様子でジロジロと卵との激しい戦いでボロボロになった私を見る。 「いきなり来るなんて…どうした?」 友人ははぁ?と首を傾げた。話を聞くと私が今にも死にそうな声で電話をしてきたから慌てて来てくれたらしい。何があったのかと問いかけてくる友人の手首を掴み、食卓まで引きずって行った。口で説明するより見て貰った方が早いだろう。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加