シュレーディンガーの卵

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「それにしても、不思議な事もあるもんだね」 友人が再び口を開いたのは食後の緑茶を楽しんでいる時だった。 「全くだよ。二度とごめんだけどね、こんな拷問」 へらへらと笑う友人。やはりコイツは卵の恐ろしさを分かっていない。 「しかし、今回のお前の話を聞くと卵って不安定な未来の象徴なんだなって改めて感じるよ」 「何それ、誰かの名言?」 いつもでは言わないような似合わないことを言い出す友人。友人は卵の殻を指でいじりながら話し続けた。 「卵って割ってみるまで中身の詳しい事分かんないだろ?普通は白身と黄身が入ってるんだろうけど。それでもどんな大きななのか、どんな色見なのか、もしかしたら黄身が二個入ってるかも。はたまた今回みたいに常軌を逸した何かが飛び出してくるかもしれない」 何やら長ったらしい話なので私は話半分に聞いていた。でも所々引っかかることはあった。今回の件を含め、普段は普通と思っていることが急に覆ることがあるのだと思い知った。シュレーディンガーの猫では無いが、蓋を開けてみないと何事を知る事も、判断も出来ない。不安定な未来。一寸先は闇の世界で、私たちは生きているのだ。
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