シュレーディンガーの卵

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朝、いつも通りスマートフォンに設定していたアラームの音で目が覚める。カーテンから少し漏れた朝日が、部屋をぼんやりとした朝特有の明るさに調整している。ベットの上で軽く背を伸ばす。そんな寝起きの私を、とある一つの衝動が支配していた。 「…卵かけご飯が食べたい」 いつもはパン派の私だが、どうした事か今日は卵かけご飯が食べたくて仕方がない。ふっくら炊き立ての純白お米が食べたい。その上にとろりと乗っかる白身と真夏のサンセットの如く黄金色の輝く黄身を喉に流し込みたい。マーガリンを塗りたくったトーストよりも、肉汁溢れる香ばしいウインナーよりも、とにかく今の私は卵かけご飯が食べたいのだ。 こうしちゃいられない。手招きして二度寝に誘おうとする布団を蹴散らして、私は台所へと急いだ。 勿論、米なんて炊いていなかった私は、非常用に買っていたパックの米を電子レンジにぶち込む。炊かなくとも数分で米が食える時代だ。なんて素晴らしいのだろう。森羅万象に感謝しながら温め終わった米を、少し大きめの茶碗に山盛りに盛る。先日スーパーで特売卵パックを買った私を褒めちぎりたい。私、優勝。 かくして、食卓の上には白米、卵、醤油の三種の神器が揃った。私の腹のエンジンも良い感じに温まっている。
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