最も幸福なウラノス

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「……お前がだらだらと仕事を続けてたら、せっかくの休みがどんどん短くなるじゃねーか」 「悪い悪い。しばらく留守にするから、周りに任せることが多くて」 「お前がやらなくても周りが勝手にやってくれるだろ。ガイア選りすぐりの優秀なエリート集団なんだからさ……」  シリウスは膨れっ面をするスピカを抱き寄せ、膝の上に抱え上げた。 「悪かったよ。俺もお前と久しぶりにのんびりできるのを楽しみにしていたんだ。そろそろ機嫌を直してくれないか」  そう宥められ、スピカはぺたりとシリウスの肩に寄りかかった。以前よりずっと、素直に甘えられるようになったと自分でも思う。  シリウスは腰のあたりまで伸びたスピカの銀の髪に指を滑らせた。  ウラノスの民は成人を過ぎると髪を伸ばす習慣がある。だがスピカはもう地上に降りているし、これまで通り短く切るつもりだった。それをもったいないから切らないでほしいとお願いしたのはシリウスだ。  お前の髪は本当にきれいだと口癖のように褒めるので、それならいいかと思い伸ばしている。結局シリウスの喜ぶ顔にはとことん弱い。  もう羽のない平らな背中をシリウスはぎゅっと抱き寄せた。 「……別荘に着いたら何をしようか」 「シリウスのしたいことをしていいよ。一緒にいられるなら俺は何でもいい」 「したいことをしていいと言われると期待するな」  ふふ、とスピカは意味ありげな声を漏らし、シリウスの耳たぶを唇で挟んだ。
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