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本当の目的
「こんなはずじゃなかったのに……」
誰もいない資料室で資料整理をしていたくるみは、ポツリとそう呟いた。
せっかく「ゲームのモデルとなったイケメンたちと乙女ゲームばりのトキメキ学生ライフ☆」を企てていたのに、計画は全てパア。ゲームの主人公キャラのような可憐なヒロインを演じていたけれど、この一件でそれも全て水の泡だ。
「はぁ……人生そんなイージーモードというわけにはいかないか」
くるみは大きなため息をついて、せっせと手元の資料をA4ファイルに収めていく。
昨日、副会長を辞めたくない一心で「何でもやります」と言ったくるみは、会長の言いつけ通り一人で書類整理に勤しんでいた。書類の量は膨大で、ここを一人で片付けるとなると時間もかなりかかるだろう。正直しんどい。
「それでも……」
そう呟いたくるみは昨日の会長の姿を思い浮かべ、頬をだらしなく緩ませた。
ベッドの上で壁に追い詰められ、かなり近くに迫っていた会長の美しいお顔……。すぐ側から聞こえる低音ボイスを思い出すだけで、鼻血が出そう。
「くっそ!イケメンは罪だわ!!あんな無茶を言われても、それに従ってしまう自分が情けない!!」
あの美麗な顔を前にしたら、どんな命令だって従ってしまいそうだ。ぐったりと机に項垂れていたくるみはパッと起き上がり姿勢を正すと、書類を手に取り光のようなスピードでファイルに差し込んでいく。
全ての原動力は、「褒められたい」。その一心だった。脳内で妄想の胸キュンストーリーを展開させながら作業をすれば、効率は驚くほど向上した。
けれど、あの生徒会長がそうも容易く賛辞を送るはずもなく……。資料室の整理が終わったことを報告しにいったくるみに向かって、「次は生徒会専用の書庫の整理だ」と言いつけるのだった。
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