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波乱の幕開け
「初めまして、イギリスから転入してきました間宮くるみです。どうぞよろしくお願いします」
学園の桜並木も、もうすでに青葉の季節。真新しい制服に身を包んだ間宮くるみは、この五月から帝華学園の一員になった転入生である。
胸元よりも長い黒髪を耳にかけながら、くるみがにこやかに微笑めば、クラスメイトの数人──主に男子生徒──が頬を赤く染めた。
「じゃあ、席は佐々木の隣で。委員長もやってるから、困ったことがあれば、佐々木に聞くといい」
担任が指差した方を見てみると、スッと右手を挙げる男子生徒がいた。
「わかりました」
そう返事をすると担任に促され、空いている自分の座席へと向かうくるみ。その間も、彼女に周りからの視線があちこちから向けられる。
「間宮さん、よろしく」
席についたくるみに、委員長の佐々木が声をかける。銀縁のメガネに七三分けにされた頭髪。いかにも委員長然としている男子生徒である。そんな彼にも、くるみはやっぱり笑顔を絶やさずに、「こちらこそ、よろしくお願いします」と返したのだった。
「なあ、もしかしてもしかすると、間宮って、あのおもちゃのMAMIYAんとこのお嬢様だったりする?」
くるみが席に着くと近くの席の生徒たちから、声をかけられる。「ええ、ご存知ですか」と、くるみがにこやかな笑みを返すと、「マジで!」と周りは興奮気味。
「知ってるもなにも、MAMIYAといえば世界規模のおもちゃメーカーじゃん。知らない人の方が少ないよ」
「うわ〜、すごすぎて俺鳥肌立っちゃった」
「ふふ、そんなに驚かれるなんて思ってみませんでしたわ」
口元に手を当てながら、くるみはおしとやかに笑った。
「改めてよろしく、間宮さん。ぜひお近づきになりたいな」
有名大企業の社長令嬢だと知った生徒たちは、分かりやすくくるみにゴマをすってくる。けれど、そんなことはくるみにとって些細なことだった。
念願叶って転入へとこぎつけたこのチャンスを必ずものにする。
にこやかな笑みの裏で、くるみはそんな野望に心を燃やしていた。
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